#125.音楽大学 その3(音大生は忙しい!)

私が音大生だった頃、かれこれ25年ほど前になるでしょうか(うわー)。私は東京音大の器楽科、トランペット専攻に在籍していたわけですが、学生時代何してたかな?と思い出してみると、夜中まで池袋で酒のんでカラオケして、とかそういう話ではなくて、学校の中でどんなことしてたかな、と思い出してみると、記憶の多くを支配しているのが「トランペットの練習」です。誰よりも早くに大学に着いて、誰よりも最後まで楽器を吹いていました。そんな感じだったので例え1限であっても授業に遅刻して単位を落とす、なんてことは一度もなかったのですが、音楽に関係のない授業は時間のムダ!とか思い始めて行かなくなったことはありますが…。よくないですね、見習わないように。


それはともかく、大学の頃はあまり忙しいという感覚がありませんでした。自由に使える時間がとても多くてやりたいことがたくさんできていたように感じます。


対して現在の音大生は、と言うと、すごく忙しそうに見えます。客観的に見ているだけなので当然個人差はあると思いますが、とにかくやることが多い。コロナ禍だからというのもあるのかもしれませんが課題の提出がとても多いです。私自身もその課題を作ることもあるので、これが毎週続いていると考えると、まるで週刊コミック雑誌の漫画家さんのような、締め切りに追われ追われの印象を受けます。


音大ですから当然レポートだけではなく、実技系の課題もとても多いです。ただ、実技系の課題の多さは私が学生だった時もたくさんありましたし、なんだったら誰に頼まれたわけでもなく、隣で練習している同級生に声をかけて、デュエットの本を一冊全部吹き終わるまで帰れませんとか、先輩にお願いしてオケスタ(オーケストラ・スタディ=オーケストラ作品の主要部分だけをピックアップしている楽譜集)を一緒に吹いてもらうとか、仲間同士で金管アンサンブルをしたりと、自主的にいろいろやっていたのでそうした時間はとても多かったと思います。

ともかく、音大生は今も昔も個人レッスンでの課題、合奏授業の曲練習、室内楽授業の練習や合わせ、副科ピアノの練習、これらが毎週繰り返されます。譜読みや練習をしっかりと行い、合奏できちんと演奏できるところまで仕上げるためには、それなりに時間が必要になります。


その課題の多さの中で、しっかり地に足をつけて積み重ねていけるかどうかは、前回の記事でも書いた通り「基礎力」にかかっていると考えます。


授業で聞いた話がすでに知っていることであれば、より深い知識になって自分の中へストックされるスムーズな展開になりますが、まったく知らないことを授業で初めて耳にしてしまうと、授業中は記憶にストックするとか、ノートに書き記すだけで一旦終わってしまい、授業後に調べて理解する(これができる学生は素晴らしい)、もしくはそのまま忘れてしまう「取りこぼし」が起きてしまいます。


この差は非常に大きい。


譜読みに関しても同様で、例えば一番わかりやすいのが、楽譜に楽語がたくさん書かれていたとして、入学前にできる限り多くの楽語を覚えている人は、それらを瞬時に理解できますし、それを踏まえた上での譜読みができるのに対して、全然楽語を覚えていない場合は全部調べなければなりません。もちろん知らない楽語を全部調べる姿勢は大変晴らしいことですが、それをせずに楽語を無視して音符だけを追っかけてしまうと、実はとても重要な楽語が書いてあることを気づかずに合奏でひとりだけ違うことしてしまったり(riten.をrit.だと思って演奏すると合奏で恥ずかしい思いをします)、レッスンで質問されて答えられなくて時間を使ってしまうなど、かなりの差が生まれてしまうのです。


ですから、楽譜を理解する基礎力が高ければ高いほど譜読みにかける時間は少なくて済み、より深い表現の追求ができたり、残った時間で他の作品に触れることもできます。


先ほども申しましたように音大はとても忙しいため、大学に入ってから基礎力を高めようとしても、その時間を確保することがなかなかできません。したがって、大学に入学するまでの間にどれだけ基礎的な知識と演奏の基礎力を高めておけるかが入学後のスピードを決定するわけです。


現在中高生の方で音大を目指そうをしている方は、入試課題に含まれているかはまったく関係なく、専攻の楽器以外のピアノ、楽典、聴音、歌をできる限りしっかりと勉強しておくことをオススメします。


ということで今回はここまでですが、前回までの音大に関するお話もぜひご覧ください。リンクは以下の通りです。

ということでまた次回!



荻原明(おぎわらあきら)

[トランペットオンライン講習会(最終回)]
10月23日(土)『指揮者や指導者がよく使う言葉の翻訳をしよう』参加者募集

ついに最終回のトランペットオンライン講習会。最後は指導者や指揮者からの言葉を募集し、それらが実際にどのような意味で使われ、奏者としてはどのように対処することがベストなのかを考えてみたいと思います。

みなさんが言われた指揮者や指導者からのいまいち分からなかった言葉も現在募集中です


オンライン講習会はこのような感じです⇩

講習会は最終回となりますが、1回分お安くなっているフリーパスでこれまでのすべてのアーカイブが視聴でき、もちろん最終回のリアルタイム参加もできます(リアルタイム参加は自由です)。フリーパスの購入、ぜひご検討ください。お求めはBASEにて。


今回のみの単発購入はPeatixにて承ります。お支払いが完了すると当日の参加URLが自動的に発行されるので非常に簡単です。

オンライン講習会2021総合サイトはこちらです。

オンライン上ではありますが皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

ぜひご参加ください!

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師