#154.録音した自分の演奏をどのように聴きますか?

自分の演奏や合奏を録音することはありますか?


僕が音大生の頃は今みたいにスマホなどなくて、録音するのも専用の機材を用意しなければなりませんでした。若い方はご存じないと思いますが、当時はMDという小さなCDがプラスチックケースに入ったもの(そもそもCDがわからない方もいらっしゃるかもしれませんが…)を使って録音をしていました。時代ですね。


話を戻しますが、録音をしている、という方に質問です。

録音したものを聴く時、どんなことに耳を傾けていますか?


・音のミスにショックを受ける

・音程の合わなさがイヤになる

・ピッチの悪さに落胆する

・リズムが楽譜や他の人と合っていないと反省する

・他の楽器とバランスの悪さに初めて気づく

くそう!練習だ!

なんてことになっていませんか?


楽器を扱うこと、演奏することに慣れていないと、録音を聴いたときに「え、私ってこんな演奏しているの?」と、演奏にギャップを感じることが多くなります。


ミスや不安定な演奏に気づき、それを直すためのきっかけになるのも録音のメリットかもしれませんが、このようないわば反省と言う名の「ダメ出し」ばかりをしていると精神が持たなくなって演奏が楽しくなくなったり、そもそもミスを正していくだけの練習でたどり着くのは「機械的に完璧な演奏」であって、本来の音楽のあるべき姿としては不十分です。


では、録音をどう聴くべきか。


お客さんの立場になって聴く

録音を聴く時、コンサートホールのお客さんの立場になってください。チケットを買って、スケジュールを調整して、電車に乗ってホールに着いて、客席で少し待って、いよいよ始まる!そんなシミュレーションからの録音した演奏を聴いてみましょう。


その演奏にあなたはどんなことを感じましたか?心からの拍手を贈れますか?コンサートに来てよかった!また聴きに行きたい!と思いましたか?ちょっとしたメロディの歌い方にドキっとしたり、感動して涙が出そうになったり、嬉しくなったり、そんな影響力を感じますか?


音楽は、作品を演奏することで聴く人へ何かを伝える行為です。録音はその擬似的なシーンを簡易的にセッティングできる方法なのです。


ただし、このような聴き方をするためには、その作品、その場面を理解して、音色や表現にこだわり、自分はどんな演奏をしたいのかを明確に持つことになるわけで、これは結構大変だし、納得いくところまで到達するには時間がかかります。


ですから、まずはどんな時でも「自分が楽しい!」と思って演奏していること、これが大切です。楽しげにしている人は周りからも良い印象を持たれます。ただし、楽しいというのはケラケラと笑っていたり、ニコニコ踊っているのではなく、「意欲的である」という意味で捉えてください。そうした意識、姿勢で演奏したものは、ミスしないようにしなきゃ、とか、音程!ピッチ!と思っている時の演奏よりも絶対に良いものになっているはずです。


ということで、今回はここまでです。

また次回!



荻原明(おぎわらあきら)

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皆様のご参加、お待ちしております。

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師