#160.バテる前に休憩を

音大生の頃、金管楽器以外の人に「金管の人って休んでばっかりだよね」と言われたのを覚えています。

確かに、音大の中で金管楽器と言えば一風変わった人が集まっているわけで(主観です。しかも当時の印象)、本当に練習サボってフラフラしている人もいました。とは言ってもしっかり練習している人のほうが多かったわけで、それなのに「金管は休んでばっかり」と言われてしまうのには理由があります。


バテる

トランペットに限定して言うなら、数分間マウスピースを一度も離さないで演奏することすら結構大変です。これは、振動する唇部分が同じ状態を保ち続けることが難しい、という肉体的理由があるからで、決して言い訳をしているのではありません。

まあ、どんな楽器だって体を使って演奏をするわけですから、いつかは限界を迎えるわけですが、トランペットはその中でも群を抜いて演奏できなくなる楽器だと思います。この健康的に演奏できなくなる状態を「バテ」と呼びます。


しかし、このバテをできる限り起こさないようにするなどの工夫はできます(根性ではできません)。休ませることです。

ただし、口の周りや顔面の筋肉を必要以上に使っていたり、マウスピースを必要以上に唇に押し付けてしま無理な方法で演奏していると、その日はもう復活できなかったりするのですが、正しい演奏をしているなら、ある程度肉体的に過酷な作品であったとしても少しの時間(数分から数十分)楽器を吹かず、休んでいれば復活します。


精神力

肉体的側面だけでなく、精神力も重要な要素です。目標が不明瞭だったり、ダラダラと長時間楽器を吹いても得られるものは少なく、体力や精神力がどんどん削がれてしまいます。これを私は「精神的なバテ」と呼んでいます。


目標を明確にし、短時間の集中で目標を達成することで精神的なバテを起こさず、実のある練習時間になります。


ただ、短時間で得られる目標は1つや2つですし、その瞬間だけで確実に解決できるかはわかりません。特に奏法面の課題は少しずつの積み重ねや研究、実験の末に目標達成することのほうが多いと思いますし、そもそも練習すべき作品が多ければ物理的に必要な時間は多くなり、長時間の練習が必要になる場合もあります。

肉体的側面と精神的側面が充実した状態で常に練習に臨むために必要なのが定期的な休憩です。


休憩の取り方

休憩は「そろそろ休もうかな」と思って休むよりも、その日に使える練習時間枠を事前に把握し、逆算して休憩時間を決めておくことをお勧めします。集中力の高い人や根性論を持った人ほどなかなか休憩を取ろうとしなかったり、そもそも休憩時間を確保することを忘れてしまいがちです。ですので、最初のうちは10分吹いたら5分休むなどを実践することによって自分自身の集中力維持のペースと肉体的バテが起こるペースか見えてきます。また、1回の休憩時間をどのくらい確保すれば唇が復活するかも見えてきます。


長時間練習できる時には、大休憩を用意することも大切です。練習時間の中盤あたりに30分から1時間程度楽器から離れる時間を確保することでリフレッシュできるし、頭の中を整理する時間にもなります(意外にこうした時間に奏法面でハッと気づいたり、良い演奏表現が浮かんできたりするのです)。


休憩時間の使い方

休憩の最大の目的はその名の通り休むことです。何もせずボーっとすることも大切ですが、外の空気を吸いにいったり、誰かと楽しくおしゃべりしたり、自分が一番リフレッシュできる方法を見つけたいものです。


また、精神力が維持できているのであれば、次の練習に備える準備時間にするのもアリです(ただし、休憩時間はあくまでも休憩するためにあります!)。


楽器を吹く時間だけが練習ではありません

そもそも練習時間=楽器を吹く時間とは限りません。唇だけを休ませる目的であれば、ピアノを弾いて声に出して音取りをしたり、楽譜を分析したり、音楽を聴いてみたりと、練習内容についても考えてみたいところです。



ということで、今回は練習と休憩についてのお話でした。

また次回!



荻原明(おぎわらあきら)

ツキイチアンサンブルとツキイチレッスン参加者募集中

1ヶ月に1回開催するトランペットアンサンブルとトランペットレッスンです。

アンサンブルは毎回テーマを設定し、それに沿った解説、実践をしながらアンサンブル作品を一緒に演奏する流れです。単に曲を作っていくだけではない、講習会要素のあるアンサンブル体験です。


レッスンは1名から複数名まで自由に参加人数を設定できます。内容は参加される方が決めることができます。個人レッスンでは体の使い方、音の出る原理、奏法などの基礎的なところを重点的に学ぶこともできますし、部活や楽団で練習しているパート譜をご持参くださっても構いません。

複数名でのレッスンでしたら、パート内での音色の統一など講習会的に基礎レッスンをすることもできます。曲作りにもご利用ください。


ツキイチアンサンブル、レッスンともに単発参加型ですので、受けたい時にお申し込みいただけます。今後の開催は、


[アンサンブル]

2022年11月19日(土) 19:00-21:00(テーマ:タンギング)

2022年12月17日(土) 14:00-16:00(テーマ:ユニゾン)

2023年1月14日(土)14:00-16:00(テーマ:ハーモニー(予定))


[レッスン]

2022年10月30日(日)10:00-21:00

2022年11月13日(日)10:00-16:00

2022年11月26日(土)18:30-21:30(番外編)

2022年12月25日(日)10:00-21:00

2023年1月7日(土)10:00-16:00


それぞれ池袋周辺の会場になります。詳細、お申し込みはBASEにて承ります。

ぜひ一度ご参加ください!

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師