#161.楽語 1

私は中学、高校の頃吹奏楽部で新しい楽譜を渡されると、すぐにでも音にしてみたいし、実際すぐ音を出していました。同じような方、多いのではないかと思います。


しかし当時の自分へは「音を出す前に楽語を調べよう」と今さらながら言いたいです。


楽語とは

楽譜には音符や数字以外に文字が書かれていると思います。これらを「楽語(がくご)」と呼びます。

楽語はさらに「速度に関する楽語」「曲想に関する楽語」「演奏指示」に分けることができます。速度と曲想の両方が含まれている楽語もたくさんあります。

楽語の多くはイタリア語ですが、英語圏の作曲家は英語で書くなど、自分の国の言葉で書く場合もとても多く、楽語はとても数が多いです。


[速度に関する楽語]

曲の冒頭などに「Allegro」とか「Moderato」と書いてあるのを見たことがあるはずです。これらは、この作品(場面)のテンポがどのくらいなのかを示しています。速度に関する楽語は、はこのブログに以前記事を書いているのでそちらもぜひご覧ください。

また、曲の途中に「rit.」とか「accel.」などが書かれているのを見たことがあると思います。これらは速度変化についての楽語です。rit.はritardando(リタルダンド)と読み、次第に減速していく指示、accel.はaccelerando(アッチェレランド)と読み、次第に加速していく指示です。


[曲想についての楽語]

楽語の中で最も種類が多いのがこの曲想に関連するものです。曲想とは「イメージの方向性を示す言葉」です。その場面が元気なのか、怒ってるのか、悲しいのか。例えば「doloroso(ドロローゾ)」というのは楽語辞典的に言うと「悲しそうに」という意味なのでわかりやすいですね。

しかし「marcato(マルカート)」は「はっきり」という意味なので、我々トランペットの場合にはタンギングも含め、できるだけ明確にリズムが表れる演奏を心がけなければなりません。しかし、それだけではまだ不足していて、「なぜマルカートなのか」を考える必要があります。ファンファーレや勇壮に演奏して欲しいのかもしれないし、何か他の具体的なイメージを作曲家が持っているのかもしれません。演奏する上でゴニョゴニョしそうだな、と作曲家が感じたので保険的に書いたかもしれません。


ですから、楽語は常に「なぜ書かれているのか」を分析することが大切なのです。


[速度と曲想が合体した楽語]

例えば、「smorzando(ズモルツァンド)」は煙のように消えてなくなる、という意味なのですが、これは結果的にdiminuendo(ディミヌエンド=だんだん弱く)とritardando(リダルダンド=次第にゆっくり)の要素が含まれています。


「allargando(アラルガンド)」は「拡大」という意味があるので、結果的にcrescendo(クレッシェンド=だんだん強く)+ritardandoの要素が含まれます。

「Maestoso(マエストーゾ)」は「堂々と」なので、若干テンポが落ちることもありますし、「sostenuto(ソステヌート)」は「各音を十分保持して」といった意味なので、こちらも若干テンポが落ちることがあります。

「animato(アニマート)」や「con brio(コン・ブリオ)」は「元気よく」なので、テンポが上がる場合があります。


こうした変化は「その場面をどのように演奏したら最も活きるか」を指揮者や演奏者がどう解釈するかにかかっていますので、明確な答えはありませんが、速度にも影響を与える可能性があると理解しておく必要があります。


[演奏指示]

トランペットとしては「mute」が最も良く見る指示記号だと思います。意味は文字そのまま「ミュートを装着しなさい」という意味です。muteは英語で、これがイタリア語になると「con sordino(コン・ソルディーノ)」となります。ミュートをはずす時は英語なら「open」、イタリア語なら「senza sordino(センツァ・ソルディーノ)」となります。「con」は英語で「with」、「senza」は英語で「without」です。


ちなみに、単に「mute」と書いてある場合は通常ストレートミュートを指していて、カップの場合は「Cup mute」と書いてあることが多く、「con sordino(cup)」と書かれているのを見たこともあります。作曲家によっても書き方が微妙に異なります。


いかがでしょうか。楽語とひとくちに言っても様々なものがあり、今回ご紹介したのはごくごくわずかなものです。楽譜に書かれている文字を無視せず、その意味を理解した上で実際に音を出すことが大切であると理解してください。


次回も楽語についての続きを書いていきますので、引き続きご覧ください。



それではまた次回!




荻原明(おぎわらあきら)

今後のツキイチ開催日


[ツキイチレッスン]

11月13日(日)10:00-16:00

11月26日(土)18:30-21:30

12月25日(日)10:00-21:00

どなたでも、どのような内容でも受講できる単発参加型レッスンです。グループレッスンも可。


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11月19日(土)19:00-21:00(テーマ:タンギング)

12月17日(土)14:00-16:00(テーマ:ユニゾン)

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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師