#164.楽譜のリズムを把握するのが苦手な方へ

料理をするのが好きで、ほぼ毎日しています。とは言え、大学を卒業して一人暮らしを始めるまでは一度も料理をしたことがなく、まったく知識がない状態で作ったので、当時は失敗だらけでした。それに、完成までにとても時間がかかりました。


何に時間がかかったかといえば、レシピに書かれている基本的な指示を理解して正しく行うこと。例えば包丁の使い方、切り方、下準備、そうしたミッションの具体的イメージがわかなくて、調べては実践して、また調べては実践して。

そうやって何度も料理をしていくうちに、少しずつ技術や知識が増えてきて、今では簡単な料理であればレシピをちょっと見れば何をどのような順番で行うかわかるようになり、レシピを見なくても「多分これをこうするんだろうな」と想像できるようになるまでにはレベルアップしました。


そこでわかったのが、料理の下準備の方法は意外に同じものが多く、いくつかの組み合わせでしかないことに気づきました。


これ、音楽における「リズム」も同じだと思うのです。


音楽に出現するリズムには、いくつかのパターンがあります。しかもそのパターンは意外にも数えるくらいしかありません。初心者向けの教則本などを使って、簡単なメロディをどんどんこなしていけば自然と理解できるようになります。


「そんなことあるか!」と思った方、ではなぜ楽譜に書かれたリズムが難しく感じる時があるのか、と言いますと、いくつかの理由が挙げられます。


・テンポによる影響

・音程(音の高さの変化)があるから

・アーティキュレーションが書いてあるから

・ダイナミクス(強弱)があるから

・拍子があるから

・楽器をコントロールする技術が必要だから


こうした要素と合体すると、リズムパターンが増えたように感じ、難しさえを覚える方がいるのだと思います。

言い換えればこれは、上記の条件を一時的になくしたり、無視することでシンプルにリズムだけを理解できることがわかります。具体的には、


・自分が把握しやすいテンポに(一時的に)変える

・一番吹きやすい音1つで演奏してみる(音程を無視する)

・強弱やアーティキュレーションを無視

・タイが付いていてややこしいのであれば一旦外します。

・休符と音符が混在していてややこしいなら、休符を一旦消して音符で埋めます。


さらに楽器をコントロールすることそのものがリズムに向ける意識を半減させてしまうのでしたら、一旦楽器を置いて、手拍子とか口で「タタタ…」などで歌ってみるのも良いと思います。とにかく正確なリズムを把握することが目的なので、手段は何でも良いのです。省ける要素は全て省いてしまって構いません。


ただし、これらの練習をする上で、少しでもいいので把握しておいてほしいことが2つあります。


1.拍子を感じていること

2.一定のテンポであること


音楽が音楽であると人間が認識するのは、日常にあまり存在しない「一定の均一な循環する要素」です。例えば4拍子は「1,2,3,4」の後、また「1,2,3,4,...」と循環します。そして毎回1拍目が強拍という重さのある拍になります。リズムを理解する際にも、拍子の循環を持っているほうが音楽の流れに乗っかることができ、理解が早くなります。


また、一定のテンポが続くと、同じリズムは何度現れても同じに聴こえますが、テンポにブレがあると同じリズムが同じものに聴こえません。これではリズムの理解は難しいので、どれだけゆっくりでも構いませんが、テンポが変わらないように心がけましょう。ちなみにテンポがあまりにゆっくりすぎると、それはそれで理解しにくくなるので、適度なテンポを見つけられるようにしましょう。


ということは、この練習には機械的ではあるけれそ、一定のテンポをキープしてくれるメトロノームが欲しいですね。リズムを把握するための練習には効果を発揮します。



いかがでしょうか。リズムが苦手だと思っていた方、多分それはリズムではなく他の様々な要素が影響しているのだと思います。ぜひ試してみてください。

それではまた次回!



荻原明(おぎわらあきら)

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隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師