みなさんこんにちは!
トランペットを吹く人、教える人の荻原明(おぎわらあきら)です。
ただいま数回に分けて「楽譜を読むための基本」を解説しています。シリーズになっているのでぜひ過去の記事もご覧ください。
調とは何か
音楽に携わっていると必ず出てくる「調」や「音階」という言葉。絶対に必要で大切な情報ではありますが、「これは何調ですか?」とか、「cis mollの音階を演奏しましょう」と言われるとギョっとしてしまう方もきっと多いはず。
そこで今回は西洋音楽では絶対に必要な「調」と「音階」について、できるだけわかりやすく簡潔に解説していきたいと思います。簡潔に説明するために、いくつかの知識をすでに持っていることを前提として書きますので、もしご存知ないことがありましたら「楽典」などで調べてください。
調は「ステージセレクト」
調にはたくさんの種類があります。
私は、それらひとつひとつが「個性を持った世界」であり、例えるならゲームの中のステージセレクトのようなものだと考えています。
平原のステージだったり、海、山、森、砂漠、朝、夜、夏、冬...もちろんどの調がどの世界である、と決めているわけではありません。あくまでもこれは考え方であり、それぞれが独立した世界である、と認識したいのです。
なぜそう考えるのか。それは、調についての知識が乏しい奏者が、調号が付かないC dur(ハ長調)を常に基準にする傾向にあるからです。
例えば、調号が付いているところをご丁寧に蛍光ペンや赤ボールペンなどでらいんを引いているのをよく見かけます。しかしこれではまるで「余計な変化音が出てきた」「全部C dur(ハ長調)でいいじゃないか!めんどくさい!」と言っているようなもの。音楽という世界がずっと平野ステージだけで面白いでしょうか。様々な調があるから、音楽に彩りが生まれ、変化を楽しむことができるのです。
調と長音階
今からおよそ400年ほど前に、1オクターブを12個に分割した「平均律」が考えられました。この12分割した隣り合う音を「半音」と定義し、これを元に規則性のある音程によって「音階」ができました。
音程は「度」という単位で表し、同じ音、例えば「ド」と「ド」は「完全1度」。「ド」と「レ」は2度になります。鍵盤をイメージするとわかりやすいですが、「ド」と「レ」の間には黒鍵が存在しているので、半音2つ分の音程であることがわかります。この音程を「長2度」と呼びます。
また、「ミ」と「ファ」も2度ではありますが、この間には黒鍵がありませんのでここは「半音」であり、同じ2度でも「短2度」と呼びます。
音階はこの「長2度」と「短2度」によって構成されています。
では具体的にどのような順番で音階が構成されているか確認してみましょう。「C(=ハ)(=ド)」の音をスタートして音階を演奏します。
短2度の部分が2箇所ありました。この音程順で構成されている音階が「長音階」です。
そして平均律の最大の特徴は、「どこから始めても音階が成立する」点です。
例えば半音上の音から先ほどと同じ音程間隔で演奏するとこのようになります。
このように、すべての鍵盤を音階のスタート音(=主音)として音階を作れるので、主音の音名を音階の名前にし、それぞれを差別化しています。そして楽譜上では視覚的にわかるように五線の左側にシャープやフラットを用いてそれを表すことになりました。
したがって、白鍵だけで演奏している長音階は、音階のスタート音が「C(ハ)音」なので、
日本語→「ハ長調(の音階)」
ドイツ語→「C dur(ツェー・ドゥア)(の音階)」
英語→「C メジャー(スケール)」
と呼び、楽譜上では調号が付きません。
なお、「ドゥア」「メジャー」は長調、「スケール」は音階という意味です。
それぞれの音につけられている名前(=音名)「ドレミファソラシド(イタリア語)」「CDEFGAH(B)」「ハニホヘトイロ」に関してはここでは割愛しますので、知識が曖昧な方は楽典で確認してください。この記事ではこの先、日本音名とドイツ音名を中心に話を進めますのでご了承ください。
調号の仕組み
調号とは、楽譜上でその作品が何調かわかるように書かれた記号です。
[シャープ系の調]
シャープはこのような順番で記されます。
それぞれの幹音(過去記事参照)にシャープを付けられるので、最大で7つです。
この調号だけで、音階の主音(=調)が何かわかります。経験を積むうちに全部の調を覚えてしまうようになりますし、それが理想ですが、「なぜこの調号がその調なのか」を導き出す方法を知っておいて損はありません。シャープ系の調はこのように覚えましょう。
『調号の一番右にあるシャープの2度上が主音』
例えば、シャープ1つだとこのようになります。
簡単ですね。同じようにシャープ2つ、3つ、4つが何調なのか調べてみましょう。
ただし、注意することがあります。シャープ5つを見てみましょう。
この場合、一番右のシャープが「ミ」ですから、2度上は「ファ」と言ってしまいそうです。しかし、調号にはファにシャープが置かれていますので、この調は「Fis dur」です。F durではありません。シャープ系の調は6つ、7つの調号も同じように主音がシャープになりますので注意しましょう。
では課題です。すべてのシャープ系の調号とその音階を五線紙に書き出してみましょう。
[フラット系の調号]
次はフラット系です。フラットも最大で7つ付きます。
そしてこのように覚えましょう。
『一番右にあるフラットの完全4度下が主音』
完全4度とは、例えば「ド(下)」から「ファ(上)」の関係で、「長2度+長2度+短2度」の音程です。したがって、フラット1つの場合はこのようになります。
ちなみにフラット2つだとこのようになります。
「ミのフラット」から完全4度下は「シのフラット(B)」ですね(H音ではない!)。したがって、フラット2つは「B dur」とわかります。
「完全4度下」と覚えるのが最も間違いないのですが、このような覚え方もあります。
『右から2番目のフラットが主音』
これはわかりやすいですね。フラットが2つ以上になったときに使える技で、先ほどのB durもそうなっています。フラット6つであれば、右から2番目は「ソのフラット」なので「Ges dur」です。
では課題です。これを参考に7つすべての調号とそれぞれの音階を五線に書き出してみましょう。
いかがでしょうか。調や音階は慣れですから、覚えてしまえば大したことはありません。頻繁に使って覚えてしまうのがもっとも簡単です。楽譜に何度も書き、鍵盤で弾き、そしてトランペットで繰り返し演奏しているうちに自然と感覚が身についていきます。
最初にも書きましたが、調というのはそれぞれ個性を持ったステージです。ですから、C durにシャープ1つ付いてしまったのではなく、それはG durという世界なのです。
今回は長調とその音階の仕組み、そして調号から主音への導き方を解説しました。あまりこういった話が得意でない方は、この機会にじっくりと理解して、正しく音楽を理解するためのスキルアップを図りましょう!
では、次回も調について解説します。
また次回です!
荻原明(おぎわらあきら)
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