みなさんこんにちは!
トランペットを吹く人、教える人の荻原明(おぎわらあきら)です。
前回まで「楽譜を読むための基本」を延々と解説して参りました。楽譜の基本を理解せずに音楽はできませんから、重要なところだけでもと思って書きましたが、結局こんなに長くなってしまいました。わからないことが出てきたらぜひ読み返してくださいね。
「楽譜を読める」ということは、「楽譜に書かれた音楽に関する情報を理解できる力を持った」ということです。こんなすごい力を手に入れられるなんて、素晴らしいですよね。
しかしまだ課題は残っています。
楽譜が読めるからと言って、その楽譜に書かれたことをきちんと演奏できるかは、また別の話であること。
そこで今回の話です。
楽譜を見て演奏する
楽譜にはたくさんの情報が記録されています。音符だけ見ても、音の高低、リズム、スタッカートなどのアーティキュレーションが関係していて、すべての情報が関係し合っているだけでも大変なのに、それをトランペットで演奏しようと言うのだからそっちのことも考えなければならず、大忙しです。
初心者の方が最も難関に感じる理由のひとつが、このように「一度にやるべきことがたくさんある」点なのです。
では、まずはこれらをバラバラにして考えていきましょう。
バラバラに考える
[テンポだけを考える]
音程もリズムもテンポなくしては決定することができません。ただし、実際に楽譜に書いてあるテンポで演奏することは最終的な目標のひとつです。自分にとってわかりやすいテンポであれば良いのですが、とても速かったりとても遅いと、もうそれだけで難しく感じてしまいますから、最初の段階ではこの後に行う音程確認の練習と、リズムを理解する練習で無理なく取り組める速すぎず遅すぎない「一定のテンポ」であれば何でも構いません。
そのためにはまず、楽譜に書いてあるテンポがどのくらいなのかを理解しましょう。テンポはメトロノームで確認するのがもっとも確実で手っ取り早い方法です。具体的なメトロノーム記号が書かれていなくても、楽曲であれば何かしらの速度に関する記述があるはずですからそれらの情報からおよそどのくらいのテンポがこの作品に最適なのかを暫定で良いので確認します。
それを理解した上で、これから音程練習、リズム練習をする際の設定テンポを決めておきます。
テンポに関して、過去の記事で詳しく解説をしていますのでぜひ参考にしてください。
[音程だけを感じる]
テンポが決まったら次に音程の練習をします。音程というのは音と音の距離のことです。したがってこの練習は、ひとつひとつの音を当てることが目的ではなく、次に来る音をあらかじめイメージしたり歌えるなど、理解した上で全体的な流れを把握することが目的です。
そのためにはまず「調」について理解しておくことが大切です。
調については少し前に「調と音階について」の記事を2回にわたって書きましたので、そちらを参考にしてください。
少なくとも、調号を確認した上でこれから演奏する調が何であるか、可能であれば長調なのか短調なのかを理解します。調というのはそれぞれに世界(ステージ)を持っているので、その世界に自分も入りこめてしまうと(音階を構成する音群を把握すると)音程を感覚的に感じ取りやすくなります。
それができたら、リズムを無視して先ほど決めた演奏しやすいテンポで音符を書いてある順番にひとつずつ並べてみます。トランペットで音を出しても構いませんし、ピアノで音を出して声で一緒に歌ってみるのもとても効果的です。ただしピアノでトランペットの楽譜を演奏する際は書いてある音と実際に聴こえる音の高さが違うことが多いと思うので、そのあたりは理解しておく必要があります。移調された譜面についてはまた後日書いてみたいと思います。
リズムがないぶん、あまり長すぎる範囲を一度に並べてしまうとだんだん意味がわからなくなるので1小節とか2小節などの短い範囲で何度か繰り返したほうが良いでしょう。もし取りにくいと感じる音程の部分があれば、そこだけ重点的に確認します。
[リズムだけを考える]
一旦音程から離れて、次はリズムを確認します。
リズムは音程以上に複雑な場合もあり、また、無限にパターンがあるので、作品によってはこれが最も難しく感じる可能性があります。
リズム練習で特に気をつけて欲しいのは、音の出だしだけではなく、それぞれの音がどれくらいの長さキープされているのか、要するにその音がいつ終わるのかも必ず理解するようにしましょう。
音程を理解するために調を知る必要があったように、リズム練習の際には必ず「拍子」を理解してから始めます。吹奏楽作品の場合、拍子が変わる場面や混合拍子が登場する機会も多いので、難しく感じる箇所はそれだけを重点的に見る必要があるかもしれません。
リズム練習をする場合はメトロノームを鳴らしっぱなしでも良いと思います。手拍子でやってみたり、歌えるならば棒読みで構いませんからラララとか可能ならばドレミで歌えれば更に次のステップに繋がりやすくなります。
多分リズムが最も難しいですから、他にも音源を聴いて感覚的に覚えるとか、他の人と一緒にサポートしてもらうなど、様々な視点から、自分が理解しやすい方法を見つけることが大切です。
要素を合体させる
音程、テンポ、リズムそれぞれの確認と理解が十分にできたら、それらを合体させてみます。
テンポとリズムは切っても切れない関係で、すでに合体しているので、そこに音程を合わせていくことになります。
この時まだ楽譜の指定テンポである必要はありません。先ほどリズム練習をした際のテンポのままで良いでしょう。その一定のテンポの中に、きちんとしたリズム、そして音程が合体すれば楽譜に書かれている最も重要なデータは理解できています。もしこの時点で難しいと感じたとき、それがリズムによるものなのか、音程が理解できていないのかを見抜くことが大切です。それがわかったら一旦戻って先ほどのリズム練習や音程練習をその部分だけ確認してください。
難しく感じる理由はそれ以外にも考えられます。トランペットのコントロール。いわゆる技術的なスキルの問題です。ただ、これは今回の話題とは少し離れたところにあるもので、教本を使って特定のテクニックを手にいれる別の練習になりますから、機会を見て少しずつ解説したいと思います。
テンポ、リズム、音程を合体させて曲を演奏できるようにする工程は、ジグソーパズルを組み立てることと似ています。最初のピースを噛み合わせるのがとても根気がいるのですが、少しずつピースがくっつき合ってだんだんとひとつの音楽を生み出していきます。
こうした行為を楽しめることが大切です。音楽の練習、特に初期段階の練習はじっくり腰を据えて丁寧に理解を重ねていきましょう。
小節線と練習番号
楽譜を見ていると、2重線の小節線があることに気づくと思います。複重線と呼ばれるこの線は、調や拍子が変わるなどここから何かが変わることを示唆しています。したがって、楽譜を読む際にはそこが音楽の変化する境界線だと考えてみるのも良いかもしれません。
また、合奏の時に便利な練習番号も適当に割り振っているのではなく、キリの良い場面だから書かれていることがほとんどですから、楽譜を読むための練習範囲を設定したり、目標範囲にするのも便利です。
ただし、これらは楽譜を浄書(キレイに書くこと)をした人や出版社の裁量の場合があり、例えば作品の流れと関係なく10小節ごとに練習番号をふっているところもあります。それらは楽譜を使っていくうちにすぐにわかると思いますが、確認はしておくに限ります。
さていかがでしょうか。
楽譜を読むことに慣れていからと、正しく理解しないまま感覚的に演奏することで、合奏をしていて自分だけ違うことをしてしまったり、クセになって修正できないなど後々苦労するので、丁寧に理解するよう心がけてください。
とはいえ、楽譜をたくさん読み込んでくると、音楽にはある程度のパターンがあることに気づくはずです。そのために少しずつ楽譜を読むスピードは上がっていきます。
それではまた次回です!
荻原明(おぎわらあきら)
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