#087.フィジカル100%の意識は危険!

先日1月9日に「トランペット何でも相談室・オンライン」という企画を開催致しました。

これは、ZOOMを利用してトランペットのこと、音楽のことなど、どんな質問でもお答えするという企画でしたが、おかげさまで想像以上にたくさんのご質問をいただき、予定していた2時間ギリギリですべてお答えした形となりました。ありがとうございました。


と安堵していたら、私がご質問フォームを締め切らなかったために、開催直前にお送りくださったご質問に気づきませんでした。失礼いたしました。

せっかくお送りいただいたのにこのまま放置するのは大変申し訳ないので、このブログで解説して参ります。回答できなかったご質問を4回に分けて解説致します。それでは、まず一つ目。


質問========================

先日一度レッスンを受けさせてもらった者です。レッスン後から「少しの空気圧で音が自然発生するアパチュアを探すぞ」と意気込んで練習していたら、体がガチガチになっていたようで首と背中を痛めてしまいました。今は出来るだけ自然な規則正しい姿勢も心がけています。

アパチュアサイズが大きすぎるとコントロールしづらいと教えてもらったので、きっととても小さいものなのだろうと思い試行錯誤していますがうまくいきません。

(原文から一部抜粋、修正させていただきました)

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一度単発でレッスンにいらしてくださった方からのご質問です。

この時は、セッティングや音の出る原理と、その実践を中心にお話をさせていただきましたので、継続して練習してくださっていることに感謝致します。



フィジカル100%かも

質問の文章で感じたことは、「体(フィジカル)100%で考えたり実践していないか」という点です。痛みは不自然な状態、もしくは無理な使い方をしている体の警告の可能性が高く、首や背中を痛める原因は体のことばかりを考えすぎて無理な使い方をしていたのかもしれません。


私のところにレッスンにいらっしゃる方は、セッティングとか音の出し方などの最も基本的な内容についてのレクチャーを希望される方がとても多いです。そうした方が陥りやすい盲点は、「体を正しく使うことが良い演奏を生み出す」という「体優先」の発想に陥りがちという点です。


もちろん体のことを考え、理解し、意識し、実践することは間違ってはいません。しかし「なぜ体を使っているのか」立ち返って考えてみてください。「音楽」を生み出すからですよね。忘れてはいませんでしたか?


音楽を生み出す…それは例えば、音色、響き、ピッチ、音程。それだけではありません、どんな演奏が始まるのですか?ppで長く揺らぎのない美しいロングトーンをするのですか?fで力強く響く素晴らしい音を1拍鳴らすのでしょうか。そしてその時のテンポは?音楽の推進力は?音の密度は?


そうした音楽的なイメージを追求するために体が使われている。これを決して忘れてはならないのです。ウォームアップの一番最初の音であってもです。


楽器を演奏する際にフィジカル100%になるというのは、例えば、あなたが目の前にあるコップを手に取る際、


『右手の肘の角度を160度まで開きコップへと腕を伸ばす。次に手首の関節を10度傾け、筋肉を使って指を広げて手のひらの中にコップが収まったら指のすべての関節を曲げてコップを握るが、その時の握力は0.8kgをキープする必要がある。』


こんなことを考えているような状態です。

これでコップが持てるとは到底思えません。


楽器を演奏する際もまったく同じで、絶対に「音楽的イメージ」が全面に存在している状態であるべきです。フィジカルについて考えながら楽器を吹く瞬間があってはいけない、とは言いませんがその時にも必ず「これからどのような音楽を奏でるのか」、そのイメージが具体的でなければ意味がないのです。


ということで今回はここまでです。

次回もいただいている質問についてお答えします。



それではまた来週!




荻原明(おぎわらあきら)

参加日(隔週日曜夕方開催)、単発/継続、編成、レッスンテーマ、曲やジャンル、レベルなどがすべて参加者側で設定できる画期的なアンサンブル体験です。ソーシャルディスタンスなど感染防止対策を守って安全に実施しますので、ぜひ一度ご参加ください!

詳細、お申し込みはプレスト音楽教室オフィシャルサイトにて!

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師