#133.自分の目指すサウンドイメージを手に入れる唯一の方法

11月2日にこのブログに掲載した記事「個性のある演奏って何だろう」の中で、こんなことを書きました。


”「自分が『良い』と思う表現」は、前述のようにたくさん聞いてマネしてきた沢山のプロの演奏から生まれてきたものです。当然CDのように上手には演奏できませんでしたが、脳内で再生されている理想の音や演奏は常にありましたから、「もっと上手に、もっと音源みたいな演奏をしたい!」と思い続けて日々の練習をしていたことが成長を促してくれたと思っています。”


ちなみにこの記事はこちらからご覧いただけます。ぜひご覧ください。

この文章を書いていて、補足したほうがいいかな、と思うことがありましたので今回は「音と耳」の関係についてお話します。


[音とは]

ところで、音の正体とは何でしょうか。


音の正体は空気の振動です。空気振動が耳に伝わることで人間は音として認識します。吹奏楽やオーケストラ、吹奏楽やオーケストラなどで演奏をされている方は、チューニングをすると思いますが、その際、440とか442などの数字をよく耳にすると思います。この数字は「ヘルツ」という空気振動を数値化した「周波数」のことであり、Hz(ヘルツ)という単位で表します。

440Hzというのは1秒間に空気の振動が440回起きたことを意味し、この周波数は現在、音楽で言うところのA音(ラ)を指しています。

442Hzというのは440Hzよりも2回分空気の揺れが多い状態ですが、これもA音の範囲です。ほんの少しだけ高い音に聞こえるので、音楽が高揚して聞こえるとも考えられています。

私たちがよく使うチューナーは、この周波数を測定する機械です。


[音楽を聴く耳]

音についてはおわかりいただけたかと思います。では、例えばコンサートホールの客席でオーケストラや吹奏楽を聴いていた場合を考えてみましょう。ホールの規模や座っている場所によって若干の違いはあるにせよ、コンサートホールは「響きが良い空間」です。なぜ響きが良いかと言うと、ホールの壁や天井の形や素材は、音が発生した時の空気振動を的確に反射させる目的があり、空間全体、客席全体にその響きを行き渡らせることができるのです。だからまっすぐ平らではない、変わった形をしているホールが多いのです。

これは言い換えるならば、お客さんは「残響を耳で捉えている」「残響で音楽を楽しんでいる」と言えます。ステージにいる奏者がそれぞれ発生された音が様々に反射をして客席に響きを届けています。ですから、ステージで実際に鳴らしている楽器の「生音」と、客席で聴いている音とはかなりの相違があるのです。


私は音大を卒業する直前に初めてN響にエキストラとして参加させてもらいました。N響は高校生の頃から定期公演に毎月聴きに行き、その音の美しさに圧倒されていました。そんなオーケストラに乗せてもらえることで感動と緊張がものすごかったのですが、まず最初に驚いたのが、リハーサルでのそれぞれの楽器のサウンドでした。真横や真後ろから聴こえてくる生音はどの楽器も想像以上に強く明瞭なサウンドで、いつも客席で聴いていたN響の柔らかな響きとはだいぶ違う印象だったのです。こんなにバリバリ演奏されていたのか!と驚くと同時に、自分の音も含めて、音大のオーケストラ授業でこんなハッキリ明確なサウンドで演奏している人なんていなかったことを思い出しました。

N響は当時、「N響アワー」がテレビ番組が毎週放送されていて、定期公演を贅沢にも聴くことができていましたので、当然参加させていただいた回もテレビで見たのですが、そこから聴こえてきた音はいつものN響のサウンドでした。あれ?中で演奏していた音とやっぱり違うんだ。と、このギャップを知ることができ、大変貴重な経験と勉強だったと記憶しています。


要するにコンサートホールで豊かな響きを感じる演奏は、ステージ上ではかなりハッキリしたものなのです。これを知らないで客席に聴こえるいわゆる「残響」を楽器から生まれるサウンド=残響のサウンドを再現しようと勘違いすると、自分の求めている演奏とかなりの誤差が生まれてしまう、という危険性があるのです。


[音源やインターネットではさらに注意が必要]

生のコンサートでもこのギャップですから、録音されたものやインターネット上で聴く音にはさらに注意が必要です。クラシックのCDであっても生音とは違い、ミキシングしたり、場合によってはリバーブ(残響)を人為的にかけるようなこともありますから、「この音源のサウンドを自分でも出せるように目指す!」と安易に考えないほうが安全です。実際は全然違うサウンドかもしれないのです(全然違ってもやはり美しいサウンドであることに変わりはないのですが)。


[自分の目指すサウンドイメージを手に入れる唯一の方法]

したがって、自分の目指すサウンドイメージをより具体的に手に入れるには、やはり生の演奏にたくさん触れるしか方法はありません。コンサートも、ソロリサイタルとか室内楽の場合、例えば小さいホールのステージに最も近いところで一度聴いてみるのがオススメです。もしくは、目指す奏者の講習会やレッスンに参加して、自分と同じ空間で奏者が出している音を聴く経験が最も直接的です。


近年、コンサートホールに行かなくても、世界中の奏者の音を聴けるようになりました。しかし、その聴こえてくる音はマイクやミキサーを通してスピーカーから聴こえてくる音なので、実際に耳にする生音とは違うものなのです。そうした点を十分理解し、音に対するイメージを具体的に持てるように生音に触れる機会をぜひ増やしてください!


私、荻原のレッスンも随時募集しております。生音に触れる機会としてもご参加いただければ幸いです。

それでは、また来週!



荻原明(おぎわらあきら)


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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師