皆様、今年もどうぞ「ラッパの吹き方:Re」をよろしくお願いいたします。
では、本文へ。
トランペットのコンディションによって自分の演奏に納得ができる時とそうでない時の差を実感したこと、皆さん少なからずあると思います。「なんか調子悪い!」と漠然と考えるのではなく、そこには明確に理由があるはず、と原因を特定できるように考えられれば、それを少しでも回避できるようになるかもしれません。
そこで前回の記事では、フィジカル面(肉体的側面)から、考えられる主な原因をピックアップしてご紹介しました。ぜひそちらの記事もご覧ください。
さらにそのひとつ前の記事も、調子が悪くなった時に悲観的になりすぎないよう、前向きな捉え方をするための具体的な考え方について紹介しました。こちらもぜひご覧ください。
そして今回はメンタル面(精神面)から、調子が悪くなる原因を考えてみます。
メンタル面からくるコンディションの変化
ネガティブ思考
ネガティブと聞くと悪い印象を受けやすいのですが、思考の方向性はその人それぞれの持つ個性であり、一概に悪いものとは言い切れません。しかし、度が過ぎると楽器の演奏に悪影響を及ぼす可能性があります。
簡単に言えば「どうせ自分なんて」的発想を持ってしまうのは成長の妨げになります。
だからと言って、無理にポジティブ思考にする必要はありません。ネガティブ思考は自分を追求する力を強く持っているので、細かなところまで良く気づき、人に見られることを意識しやすいので、それが上手く機能すれば音楽にとって大切な「聴く人の立場になってを考える」客観的視点に立てるのです。
大切なのはやたらと卑屈になったり、いじけてしまったり、意気消沈しないことです。そのためには、「(でも)楽器を演奏することが楽しい」「(でも)音楽が大好きだ」「(でも)上手になりたい」「(でも)聴く人を笑顔にしたい」「(でも)拍手をもらいたい」と願う強い気持ちです。
ネガティブ傾向の方は披露する時間、例えば本番や合奏、レッスンなどに前向きな意思を強く持っていられるためには、それなりの完成形を作り上げる努力が必要になると思います。そのため、練習時間を十分に確保できるよう工夫することも必要かもしれません。
ポジティブ思考
ポジティブ/ネガティブはまるで良い/悪いのように扱われることも多いですが、一概にそうではないと考えていますから、言うならばポジティブ思考もコンディションを不安定にする要因があるわけです。
例えば、「まあいいや」的発想です。なんとかなるでしょ、と考えて何とかなるのは、その中に妥協が含まれていたり、もしくは不完全な状態で演奏をして、指摘を受けてもあまり気にしていないと、練習をしないでまた次の合奏やレッスンを受けてしまう可能性も出てしまいます。
ポジティブ思考は本番に威力を発揮します。たとえ根拠ない自信だったとしても、演奏が多少荒削りだったとしても意志がハッキリしているため、聴衆を惹きつける魅力的な演奏になる可能性が高いのです。
ネガティブ、ポジティブの思考パターンは一長一短。ご自身がどちらの思考を持っているかを理解して、それを上手に利用できるようになってください。
焦り
演奏に集中するためには、その前段階から精神を不安定にさせる要因を取り払うことが大切です。
例えば、演奏家はあまりギリギリに来る人がいません。それは演奏の業界は時間に非常に厳しいことがひとつ挙げられます。演奏の良し悪し以前に遅刻をすることが大問題なのです。
そして、ウォームアップや準備をする際、楽器のコンディションだけでなく、音楽をする気持ちを整えるためのメンタル面のウォームアップも必要になります。そうした時間を確保できないままに良いパフォーマンスはできません。
演奏をする前までの「焦る要因」はできる限り取り払うことが大切です。
外的要因
友達とケンカした、親に怒られた、先生に注意された、ふられた、何かの原因でイライラしている、など心にショックを受ける出来事があると精神は不安定になりますね。これは回避することが難しい場合も多いですし、長い人生の中で考えるならば、こうした経験は大切なものです。
大切なのは、本番など披露する直前にこうした事態が極力起きないようにすること、そして仮に起きても音楽、演奏と切り離せる冷静さを持てるようにしてください。これには、音楽に対する強い情熱が必要です。
緊張
本番は、やはり緊張しますよね。本番だけでなく、レッスンを受けたり、合奏練習をしたりと、評価される状態に置かれると人間は緊張します。これは誰にでも起きることですし、むしろ緊張は良いものと考えています。
ただ、この時にどのような思考が働くかでそれが大きく変化します。最初に書いたようなネガティブ思考がここで炸裂すると、「ミスしたらどうしよう」「周りに迷惑かけてしまったらどうしよう」「お客さんが怖い」など精神が内側に向いてしまって良いパフォーマンスが生まれません。
不安要素があるのは誰でも同じですから(不安要素は減らすように日々心がけて練習する必要がありますが)、ここまで頑張ってきた自分の成果を聴いてください!と精神を外側に向かわせる意志を強く持つことが大切です。
音楽を心から好きで、楽しむ。この気持ちの強さが緊張と共鳴し合うと、良いパフォーマンスにつながる可能性が高まります。
ということで今回はメンタル面からくるコンディションの不調について書きました。
メンタルという世界の中では、ネガティブな人もポジティブな人も、実はみんな同じ場所にいて、その違いはどこから生まれるのかと言えば「見ている方向」によるものなのです。したがって、ほんの少し見る角度を変えてみたり、顔を上げて見上げたり、背伸びをして遠くを見ると、結構簡単に心の持ち方が変わることもあります。トランペットを演奏していて、一時的にネガティブになった時には、その経験を大切にしつつ、ちょっとだけ目線を変えてみてください。
次回はコンディションが悪くなってしまったときにすべきことを書いていきます。引き続きご覧ください。
荻原明(おぎわらあきら)
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