前回の記事で「足し算のしすぎは失敗につながる」というお話をしました。
日常は力強い行為をするためには、それなりに筋力や勢いといった力を用意するのが普通ですが、トランペットの場合、この足し算をすればするほど結果が伴わないことがとても多い、というお話を書きましたのでぜひご覧ください。
「なるほど、では減らそう」
と思うかもしれませんが、実はこの考えも失敗につながる可能性があります。
引き算は足し算になる?
例えば、懸垂(けんすい)をしているとしましょう。腕の力だけで体を持ち上げる懸垂、かなりキツイです。もしこの状態から数cm体を下げてたとして、体への負担ははどうなるでしょうか。
『体を支えている腕の筋力を少し弱くできるから、さっきより楽になる』
と思いますか?
残念ながらなりません。
むしろ体を下げることに対し、力をさらにかけていく必要があり、楽にはなりません。
これは、「懸垂をする」という目的がある限り、筋力を弱めたら落下するかもしれない、という「目的から脱落する意図しない結果」から回避し続けようとする意思も原因です。
こうした状況を私は「引き算は足し算になる(から意味がない)」と呼んでいます。
トランペットで考える
例えば口の周りの筋肉を本来必要ではないレベルのガッチガチに使ってロングトーンをしていたとしましょう。「こんなに食いしばっても意味がない」と理解したからと言って、ガチガチの状態から少し筋力を緩めることは多分できません。なぜなら、それをしてしまえば音が出なくなる可能性があるからです。今は「音を出し続ける」ことが目的ですから、音が出なくなるリスクがあることはしたくないのです。
それでもなお、リスクを承知で力を抜いてしまうとどうなるかと言いますと、やはり「音を出し続ける」ことが目的であることに変わりないため、他の何かが発動してプラマイゼロ状態にしようとします。例えば口周辺の力に頼れないならと、プレスが異常に強くなったり、それまで発動していなかった表情筋が働き出すわけです。結果的に、最初のガチガチ状態よりも様々な筋力や力が発生したために、急速にバテてしまったり、頭が混乱してそれまでのセッティングや音の出し方がわからなくなるなど、調子が崩れることもあります。
人間は機械ではないので、プログラムされたかのような特定の筋力を指定した分働かせるなどということはできません。すべてはイメージや欲求から発生した体全体の動きの結果やバランスです。したがって、意図的に筋力をコントロールしようと試みて、解決したり改善したり、ましてや上達するのを私は実感したことも出会ったこともありません。
正しい足し算をする
ではどのようにするのが良いのでしょうか。それは
「最小限の足し算」
を意識することです。本当に必要なものを必要最低限の分量用意するのです。
力を込めることは悪ではありません。むしろ、脱力を意識しすぎるとバランスが取れずに他にいろいろな部分が発動してしまうので、目的を達成するための、そのギリギリのラインを見つける研究が必要になります。何度も何度もトライ&エラーを繰り返して見つけてみましょう。トランペットの奏法はどのようなものでも、この「最低限」で演奏することが重要になります。精神面の冷静さも重要です。
ガムシャラに力任せにならない冷静さと丁寧さで上達していきましょう。
それでは、また次回です!
荻原明(おぎわらあきら)
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9月23日(金祝)13:00-15:00(テーマ:アインザッツ)
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9月23日(金祝)10:00-21:00(残り1枠)
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