#156.足し算のしすぎは失敗につながる

トランペットを演奏している際、なんだかうまくいかないなー、と思ったら、そのほとんどは「足し算のしすぎ」が原因であると考えてください。


足し算のしすぎとは

例えば「ハッキリしたタンギングをしよう」と思ったら、あなたは体をどのように使おうと考えますか?


タンギングですから、多くの場合、舌に意識が向き、そして舌に力が入る(入れる)と予想します。その気持ちとても良くわかります。だって、日常で何かに強い衝撃を与えるのであれば、力を込めて叩きますからね。「強い結果」を実現するためには「強い力」が必要であると考えて当然です。


しかし、トランペットの場合は面白いことにハッキリしたタンギングをしようと舌に力を込めた結果、ハッキリどころか出だしが不明瞭で雑な音が出てしまいます。


これはなぜか。そしてどうすればよいか。


ハッキリしたタンギングを実現するには、実はまったく逆の方法が必要になります。柔らかい舌を上前歯の裏に軽く添えてあげると、それだけ舌は歯と強い密着状態を生み出します。この状態から「to(トォ)」や「tu(トゥ)」などtの発音をすることで明確な破裂音が生まれ、とてもハッキリした発音で音が出せる、というわけです。


舌に力を入れてしまうことで、舌本来の機能である歯との密着がうまくいかず、空気漏れをして破裂音が発音できないために、不明瞭で雑な音になってしまうわけです。


このようなことがトランペットの演奏する際のフィジカル(肉体)面に多く存在しています。これらを総合して私は、


「足し算をしすぎると結果が伴わない」


とよくレッスンでお話しています。


トランペットでイメージ通りの結果を求めていくには、最初から「本当に必要な分量」だけを用意することが大切で、その分量を見つけるために何度もトライ&エラーの研究を重ねていくことが必要です。

思ったような演奏ができない時、まずは「力を込めすぎるとうまくいかない」ことを思い出してください。


では、また次回!



荻原明(おぎわらあきら)


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隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師