#068.ピストンのフェルトを確認しましょう

トランペットを演奏していて、1年を経過したあたりから、ピストンを押し戻った瞬間に以前よりも「カコカコ」と鳴る音が大きくなった、そんな方いらっしゃいませんか?

速いパッセージを演奏すると顕著だと思います。メーカーや楽器にもよりますが、この「カコカコ」した音は単に音だけでなく衝撃としても強く感じると思います。


一方で新品のピストンは押しても音がほとんどしませんね。この違いは何かご存知でしょうか。



ピストン内のフェルトを確認してみよう

皆さんは毎日(毎回)トランペットを吹き始める際にバルブオイルを注していることと思いますが…

え、ピストンの動きが悪くなったらバルブオイルを注している?!それはダメです楽器がダメージを受けてしまいます。なぜダメなのかは過去に記事にしているので、こちらをご覧ください。

さて、バルブオイルを注す際にピストンのキャップを外しますが、そのキャップだけを持ち上げると何やらまるいフェルトがあることに気づきます。


みなさんのフェルトは何色で、どんな状態ですか。

もしも「買った時は真っ白だった気がするけど、今は真っ黒(グレー)だ」「オイルでグチョっとしている」というのであればもうこれは交換時期です。写真のグレーのほうはこれまで付けていたフェルトで、元々は白いフェルトでしたす。


このフェルトは、ピストンが押し戻った時の緩衝材の役割を持っています。ほとんどのメーカーの場合、最初は多分白いのではないか、と思います。そしてフワっとしているはずです。

しかしバルブオイルを注し、演奏を続けてピストンが何回も押され、楽器がいろんな角度で保管されるなどしてだんだんとフェルトに油が染み込み、ヘタっていきます。


緩衝材が薄くなってしまうと冒頭に書いたように押し戻った際の音が大きくなり、衝撃が強くなるので、演奏中その衝撃に耐えようと無意識にマウスピースを唇に押し付けてしまったり、その衝撃で音が揺れたり外れたりする場合もあります。


また、緩衝材が薄くなっているということは、ピストンが押されていない状態での管との繋がり位置が若干ですがずれているということになります。これは楽器のバランスとしては非常によろしくありません。

したがってこのフェルトは定期的に交換するものなのです。フェルトそのものは楽器店で購入できます。メーカーや楽器によって異なるので注意しましょう。



フェルトの交換方法

まず、ピストンを抜き取りましょう。楽器とピストンを分解する際にはどちらもアクシデントが起こらないよう細心の注意を払います。

そうしたらピストンボタンを外します。ここはネジになっているのですぐ取れると思います。

次にバルブケーシングのキャップを外します。こうすることでフェルトを抜き取ることができます。

あとは少しその周辺の油分を拭き取り、交換するだけです。ケーシングのキャップウラにも油が付いていますのでそちらも拭きましょう。


以上です、簡単ですね。


このように楽器は知らないところで徐々に劣化したり変化しているため、こまめにチェックをするように心がけてください。


楽器が良いコンディションでいられれば、おのずと演奏のコンディションも安定するものです。ぜひ大切に使っていきましょう!



それではまた来週!




荻原明(おぎわらあきら)

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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師