#078.チューニング4 〜具体的な練習方法例

現在チューニングとピッチについてお話しをしております。今回は4回目、最終回です。


今回、具体的に練習例を出していきますが、この掲載した楽譜を実践すればピッチが良くなる、なんてことは当然なくて、いつも同じことを言っていますが今回の譜例を材料として、理論を理解し、研究と実験を繰り返して自分のスキルに昇華していくことで初めて目指すものに近づいていきますから、すでにお読みいただいた方もそうでない方も過去3回の記事をご覧になった上で実践していただきたいと思います。

理想も含め、安定したピッチでの演奏は、まず個人で研究や実験を繰り返して身につけます。そうした奏者が集まればチューニングという時間の本来もつ「これから演奏する基準ピッチを確認する場」が成立します。


ただ、ずっとひとりで安定した奏法とは〜と悩んで実践してを繰り返していられる時間もそうないですから、2名の奏者でアプローチしていく方法も提案してみたいと思います。そのため、これから掲載する譜例は2重奏の形を取っていますが、もちろんハーモニーディレクターのような音を持続させられる何かで代用することができるものもあります。工夫して使っていただければと思います。

ひとりがロングトーンをして、もうひとりが動くのですが、かならず最後が同じ音に戻ってきます。そうすることによって、単にロングトーンで安定した音を持続するのではなく、音が動いても常に安定している状態でいられるかを確認できます。トランペットは音が動くとどうしてもピッチが不安定になりがちなので、常に音程感を持ってソルフェージュをしながら負担なく演奏しているかを確認することで良い結果につながります。


ちなみに、ロングトーンを担当する下のパートの方は当然途中でブレスを入れて構いません。

このような練習方法はスタート音を変えたりリズムやテンポ、ダイナミクス、アーティキュレーションを変えるなど工夫すれば無限に方法はありますから、この楽譜だけを練習して満足しないようにしましょう。


奏者同士で「合わせよう」と意識すると、どうしても楽器を必要以上にコントロールした探り合いになりがちです。アンサンブルで大切なのは誰かにすり合わせていくことではなく、全員が同じ方向を向いて歩むことです。「これで大丈夫ですか?」「私は合っていますか?」のような「お伺い」を相手の奏者へ向けるのはよくありません。合っていなかったら合っていなかったでそういう結果になっただけですから、もう一度リセットして考えてやり直していけば良いだけです。音を出しながらピッチを上げ下げして体裁を整えることはしないように気をつけましょう。


[440、442とは]

ところでこれらの楽譜は2名で演奏することを前提としていますが、ハーモニーディレクターなどでも代用ができるものがあると思う、と書きました。確かにそうなのですが、この時ひとつだけ注意してほしいのが「基準ピッチの設定」です。音が出る鍵盤アプリの多くは440Hzで設定してあり調整できない可能性が高いです。しかし現在国内でのチューニングピッチはその多くが442Hzを採用していると思われます。たった2Hzではありますが、聴き比べてみるとだいぶ印象が違うと感じる方も多いと思います。日々のピッチやチューニングのトレーニングをするのであればなおのこと、ハーモニーディレクターや調律ができているピアノ、アプリであればピッチを設定できるものを選ぶようにすることをお勧めします。


また、安定したピッチで演奏するためにはピッチや音程のことだけを考えたり意識するのではなく、音色や音量などの音質など様々な要素や視点から「合っている」状態になることが大切です。


最後に、他にも思いついたものをいくつか掲載しておきます。

交互に同じ動きをして安定感を図る練習です。

他には、以下のようなものもあります。

譜例aは後からユニゾンで参加する方法。入ってきたことがわからないくらい同じ音になれると素晴らしいです。そのためにはピッチだけでなく音質全般の統一感が必要になります。

譜例bはリップスラーです。交互にリップスラーを行ったり、ここには書きませんでしたが、だんだん音程を広げていく、なんて方法もできますね。

譜例cは譜例aと似ていますが、動きのある状態ですのでそれだけお互いのソルフェージュ力が試されます。

譜例dも譜例cと似ていますが、ユニゾンになる音を二人ともあらかじめ演奏できないので、より実践的な練習になります。

譜例dは結果的にオクターブになる練習です。これも実践的ですね。


これらのようにまずはユニゾン(オクターブ(8度音程)も含む)を安定させることを目標にするのが良いと思います。ユニゾンができれば美しいハーモニーを追求することができますが、その逆は難しいのです。


ということで4回に渡って解説してまいりましたピッチとチューニングのお話し、ぜひ参考にしていただいて安定したピッチで演奏できるようになってください!「合わせる」のではなく「合う」を目指しましょう!


それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

トランペットオンライン講習会 次回は11月29日(日)「アーバン金管教本について 前編」です。参加受付中!

あと2回となりましたトランペットオンライン講習会。最後は「アーバン金管教本」の使い方例についてお話し致します。トランペットの最も有名で使われることの多いアーバン。内容量が多く、どのように使えば良いかわからない方も多いように感じましたので、私がレッスンで行っていること、考えていることをお話し致します。今回は教本の前半部分、「最初の練習曲」「シンコペーション」「付点8分音符と16分音符」「8分音符と2つの16分音符」について解説致します。

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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師