みなさま明けましておめでとうございます。
今年も「ラッパの吹き方:Re」をどうぞよろしくお願いいたします。
では本日の記事です。
私は「もっと効率的な方法はないか」「この方法を人に説明するにはどうしたら伝わるか」「触覚をイラスト化するとどうなるか」などを考えながら練習をしています。練習の時だけでなく、日常生活を送っている時にもそうですが、やはりレッスン時は当然そうした思考がフル回転しています。
同じ言葉を使っても、人によってその理解度は大きく異なります。これはトランペットの技術の差とか頭が良いとかそういうことではなく、それぞれの人が持っているボキャブラリーとイマジネーション、日常の体の使い方とそれを言語化する際の違い、感覚の認識の違いなどによるものです。
わかりやすい例えとして、もしあなたと向かい合っている人の唇の右側にごはん粒がついていたとしたら、あなたはどのようにジェスチャーで伝えますか?「その人の右側に付いているから自分の右側を指さす」のか「鏡で見た時のように同じ方向(この場合自分は左側)を指さす」か、その人によって変わりますね。しかもそれを相手がどのように受け止めるかわかりません。左右を勘違いされてしまうことにとどまらず、もしかしたらそのジェスチャー自体がまったく違うものとして認識される可能性だって十分にあるのです。こういったものは相手へ100%確実に伝えられる方法はない、と言えます。
トランペットのレッスンでフィジカルな話をする場合、これをもっと複雑にしたものと考えれば、自分の意図したものがそのまま伝わる可能性は極めて低いと考えたほうが妥当で、しかももっと厄介なのが人間は個体差が大きいために仮に同じことができたとしてもその人にとってベストな結果につながるとは言い切れないのです。
なので言語、ジャスチャー、図解、実演、場合によって写真や動画を共有し、それらを時系列が崩れないよう、ストーリが組み立てやすいような順番を考慮しながら確認しつつ、ディスカッションも交えて進めていく必要があります。ここで最も重要なのが伝える側のボキャブラリーの多さ、そして結果へつながる道筋の多さを持っていること。それには自身の研究、アップデートを怠らないことが重要です。
同じ山を登るとしても、山頂へ行くルートは一つではありません。自分がいつも使っているベストなルートを伝えても、人によってはそれはとても難しいルートの可能性もあるのです。伝える側が相手のそうした難しさを理解せず「なんで登れないの?」と聞いてしまうのは完全アウトな行為であり、指導者即失格なのは言うまでもありません。
なぜ登れないのか、それは自分の伝え方の問題なのかもしれませんし、他の人には伝わったからこの人にも同じように伝えれば大丈夫、なんてことは絶対になくて、理解してもらえなかった場合、違うルートからのアプローチを提案したら何倍も登りやすかった、なんてことはザラにあります。
「じゃあこんな方法で登ってみてはどうでしょう」「こんなルートもあるんですが一度試してみましょうか」とプラン変更するなど、そうしたことで山頂にたどり着ける可能性を広げるストーリーの組み立てがレッスンには必要なのです。
そのためのたくさんの可能性を模索して自分の練習や研究を繰り返していると、自分自身が「今までよりもっと良い方法」「今までよりももっと良い言葉のチョイス」を見つけることもよくあります。それを採用しない手はありませんし、新しい可能性が開けたらレッスンでもどんどん伝えていきたいと思うのも当然です。
定期的にレッスンをしている方へは「こんな方法見つけたんだけどどうですか?」と提案すれば良いのですが、そうでない場合、もしかすると「この人、前と違うこと言ってる」と無責任な人と思われてしまうのかも、と感じることも少なくありません。
2016年3月に発売開始をした「トランペットウォームアップ本」ですが、これもやはり同じで、今も当然同じ方法(内容)でウォームアップをしていますが、中に書いてある文章表現は、実は現在のトランペットレッスンでは違うストーリーを採用していることも少なくありません。それは、ここ数年で自分自身の伝える精度が上がったことと、誤解を受けにくい言葉のチョイスを模索し続けているからで、書籍化するとそうしたもどかしさが生まれるのだ、と痛感します。でも、本の内容にウソは言っていないのでご安心ください。
トランペットに完璧な「秘伝の書」は作れないと思っています。20年以上レッスンを続けていて、自身が常にアップデートしている状態を考えると、今後も研究や模索を続けていく限り、この変化は起こり続けるはずです。それは必ず「改善」であると信じているので、もしトランペットが上達したい、と思われるようでしたらやはり定期的なレッスンを(アップデートを繰り返している)同じ人に受け続けることが確実だと思います。
ということで宣伝になりますが、ぜひレッスンにいらしてそれを体感してください。
今年は「トランペットを習う年」にしてみませんか?詳しくは以下のリンクをご覧ください。
荻原明(おぎわらあきら)
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