#090.フラッター・タンギング

前回に引き続き先日1月9日に開催致しました「トランペット何でも相談室・オンライン」という企画でお答えしきれなかったご質問の回答をこちらでさせていただきます。


今回の質問はこちら。


質問========================

フラッタータンギングが途中からできません。出だしからであればできますが、途中から出てくるとできない理由がわかりません。

(原文から一部修正させていただきました)

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とのことでした。


フラッタータンギングとは

いわゆる「巻き舌」です。江戸っ子がつかうような「こちとら江戸っ子でい、べらぼうめい」の「ら」のところ。


トランペットから音を出しながら巻き舌をすると、激しく乱雑な音になります。様々なジャンルで使用され、クラシック音楽でも近代作品以降は稀ですが出てきます。


巻き舌は、意識しなくてもできるようになった人と、(自称)いくらがんばってもできない人がいて、一説によれば生まれつきできない人がいる、らしいのですがそれは本当?と私は少々疑問に思っています。とは言え、検証したことがないですし、医学的にそういった根拠がある可能性も否めませんが、「日本語に巻き舌の発音がないので、日本人に苦手な人がいる」とよく言われますが、では逆にイタリア人で巻き舌できなくて正しい発音ができない人というのは実際にいらっしゃるのでしょうか(イタリア語の”r”は巻き舌で発音します)。


そんな感じなので、とりあえずできないと言う人もチャレンジしてみようよ、という考えを持っていますので、これを読んでくださっている皆さんの中で巻き舌できないよ、という方、ぜひこの先の解説を読んで実践してみてください。



巻き舌は「奥」で行う

巻き舌ができる方は、巻き舌をしようと決めた瞬間、時に口の中、特に舌とそれにともなって顎がどのような反応、動き、準備をしたか今一度確認してみましょう。巻き舌がこの時点でできない方は参考にしてください。 


巻き舌をする際、舌を若干引っ込ませて「奥に準備」しているのではないかと思います。そして巻き舌をする瞬間に「舌先が上顎に接近」していると思います。


一方で巻き舌ができない人がどのようにしているかを観察すると、多くの場合舌を前のほうに出そうとしてる場合が多いです。この「奥と前」の準備の違いができる/できないを分ける最大の原因ではないかと思うのです。



「トゥル」の発音

そして練習方法ですが、巻き舌1回分の発音を文字にすると、例えば「トゥル」が近いです。大切なのは「ル」を発音する際に舌先が上顎に軽く触れた後、「奥に移動することで発音」します。位置と動きが見えてきたら素早く一言で「トゥル」と発音し、これを「トゥル、トゥル、トゥル、トゥル」とリズミカルに連続してみましょう。舌先よりも舌の付け根など「奥として感じる部分」にしっかりした緊張(支え)をもつ感覚が大切です。

この方法がうまく行けば自然と巻き舌の発音ができてくると思います。



奏法の習得のひとつと考える

例えばタンギングを綺麗に発音するとか、音域変化に必要な舌の動きを身につけるなどと言ったいわゆる「奏法」は、すぐできる場合と試行錯誤を繰り返して見つけていく場合が人によって違い、巻き舌に関しても同じことが言えます。


したがって、これも奏法練習のひとつだと考えて、仮にすぐできなくても「自分には無理だ」と諦めるのではなく、繰り返し研究と実験を繰り返し、方法が理解できたら練習で身につけるストーリー展開が必要になります。


テクニックを手に入れたり、自分のイメージを演奏に反映させるためには、練習をするという漠然とした考えでなく、「研究、実験、練習」という3つのカテゴリーを明確に分けておくことが大切です。このお話は、過去に”note”というサービスに詳しく解説をしておりますので、有料記事ですがよろしければぜひご覧ください。

もしくは、「トランペットオンライン講習会」でも同じ内容を解説し、アーカイブがございますのでご覧ください(こちらも有料です)


フラッターが途中からできないのはなぜか

最後に、ご質問の回答ですが、これまでの情報から考えると、演奏途中からのフラッターができない理由は、


「フラッターをしている状態の口の中と、していない状態の口の中では、必要な口の中の状態が違うから」


だと思います。


フラッターをするには、多少独特な口の中の状態(舌の位置)が必要になります。ですので、演奏の途中からフラッターをする場合、「口の中の状態の切り替え」を意識してみましょう。

ご質問をいただいた方は、もともと巻き舌ができている方ですから、この問題はすぐに解決すると考えられます。


私のレッスンに対する考え方

今回の記事では私の個人レッスンの流れを意識して書いてみました。質問の回答ですから、単刀直入に「こうすれば解決する(かも)」のように書いてしまえばこの記事の一番最後に書いた「フラッターはできるけど、途中からできないのはなぜか」の部分だけでも正直なところ良いわけです。


しかし、それだと理解してもらえないか、もしくはできてしまったけれどなぜできたかわからない「謎の成功体験」になってしまう可能性が非常に高く、レッスンの後にひとりでもう一度実践しようと思ったら記憶と感覚があやふやでわからなくなっちゃった、となることが多いのです。これではレッスンをした意味がなくなってしまいます。このような展開に陥る原因は「原理」とか「順番(段階)」が抜けていることにあります。


ですので、私はレッスンで必ず原理、理論を解説し、それらを理解してもらった上で実践へ入るストーリーを組むようにしています。

この流れが理屈っぽくて面倒だと思う方もいらっしゃると思います。実際体験レッスンでそう言われたこともあります。が、この一見面倒な積み重ねを続けていくと、ある一定のラインを超えると自分一人の力で様々なものが飛躍的に伸びることができます。これに関しては今後このブログでも解説してみたいと思います。

ということでご興味ありましたらぜひレッスンも受けてみてください。

ということで、4回にわたって先日開催しました「トランペット何でも相談室・オンライン」で回答できなかったご質問についてお答えいたしました。今回はこのような経緯があったためこのような記事を書かせていただきましたが、通常はネット上からのご質問にはお答えしておりません。ご了承ください。

ご質問や解決したい悩みがありましたらぜひレッスンにいらしてください(オンラインレッスンもご用意しております)。

それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

オンライン講習会2021が4月よりスタート!詳細はバナーからご覧ください。

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師