前回から「個人練習について考える」と題し、特に「練習の中身」にクローズアップしてお話しています。
前回はざっくり言うと「理論的に学ぶことが大切です」という内容でした。ぜひ本文をご覧ください。
そして今回のお話のテーマは「効率」です。
「効率的な練習」とは
最近は部活の活動時間がどんどん短縮化され、数年後には学校からその存在が分離してしまう可能性すら出てきました。僕は中高生の時、部活があるから学校に行っていた典型的パターンだったし、吹奏楽部でトランペットに出会えたから今の自分がいるわけで、できることならこれからも部活動は存続してほしいと思っているタチです。
一方で、教員の負担が異常なのもわかりますから、存続しながらもそのあたりのバランスが改善されることを望みます。
と、この話が盛り上がると今日のテーマからどんどん離れてしまうので、これはまた別の機会にします。ともかく以前のように長い時間練習に打ち込めることはほとんどの学校ですでにできなくなっているわけで、短時間で結果につながる練習が求められていますから、効率的な練習をするためのいくつかの提案をしてみます。
1.逆算したスケジュールリング
これから1時間練習できるのか5時間あるのか、もしくは30分しかないのか。これによって当然内容が変わるわけですから、練習を開始する前に使える時間を把握しておきましょう。
そして、その時間内で何をするのか目的や目標を設定するわけですが、注意してほしいのは、絶対に「must(~しなければならない)」にしてはいけません。後でお話しますが、その日のコンディションによってはウォームアップにかける時間が長くなることも考えられるためで、練習内容のスケジューリングはあくまでも理想的な目標にとどめましょう。
また、逆算をするのは「その日」だけではありません。例えば週末に合奏が控えているとか、1ヶ月後に本番があるとか、近い将来訪れるポイントとなる日に向けて、何をどの程度まで完成させるのか。そうした大枠の逆算も大切です。
もうひとつ付け加えると、「あと1ヶ月ある」とざっくりしたイメージを持ってしまうと痛い目に遭うかもしれません。と言うのも、ほとんどの人は毎日楽器の練習だけをして生きているわけではありませんよね。仕事も勉強も家事も育児も行事も予期しなかったトラブルもあって本当にみんな忙しい。そうした過密スケジュールの「1ヶ月」でできる練習量もぜひ逆算して考えてみてください。びっくりするくらい練習時間が少ないと思います。
2.目標は緩めに設定する
イヤな話をしますが、例えば「今日は曲をたくさん練習するぞ!」と大志を抱いていざ楽器を吹いたら最悪なコンディションだった、なんてこと、きっと経験されたことがあるはずです。こうなってしまったら腹を括るしかありません。当初の予定を変更し、入念なウォームアップと基礎的な部分の見直しに専念しましょう。
先ほどの逆算したスケジュールリングの話と同様で、練習時間を確保できても、本当にやりたかったことがどのくらいできるかは未知数です、悲観的になる必要はありませんが(むしろ「今日は調子がいいはず!」と前向きになっておくほうが良いです)、可能性のひとつとして持っておくことは大切だと思います。
3.休憩を取ることを忘れない
楽器が吹ける時間は限られているため、1音でも多く音を出したいと思うかもしれませんが、トランペットは数分吹きっぱなすだけでバテてしまう高リスクの楽器です。
「バテてからが本当の練習だ」なんて本気で言われる時代もありましたが、もはや笑い話にもなりませんね。正しくは「練習時間の最後までバテない工夫をする」です。そのために最も重要なのが楽器を吹かない「休憩」を定期的に挟むことです。
何となく学校の授業や仕事のクセで休憩というのは1時間に10分くらい取る感覚があるかもしれませんが、楽器ではそれでは少ないです。というかそうした休憩と全然質が違います。
あくまでも例えですが、1フレーズ吹いたら一旦唇からマウスピースを離し、10分吹いたら3分休み、そんな1時間が経過したら15分休む。こんなペースが良いと思います(配分時間は適当に書きました)。大切なのは自分が最後まで健康かつ集中し続けられる時間配分を見つけることです。
ともかく、休憩はこまめにとりましょう。
4.楽器を吹くだけが練習ではない
完全に休む目的の休憩時間を確保するのも大切ですが、それだけでなく他のことで学びを得る時間を確保する工夫もしてみましょう。
例えば音楽鑑賞。様々な奏者や団体の演奏を聞き、音や表現に対するイメージトレーニングをします。みなさんは演奏会などに行って感化され、帰路に「今すぐ楽器吹きたい!」と思ったことはありませんか?こうした外からの影響が「自分もこんな演奏してみたい」などのイメージの幅を増やすきっかけになり、練習そのものがもっと楽しくなることもあります。そんな刺激を受けられる音源や映像をたくさんインプットしてください。
他にも、トランペットを一旦置き、声で歌ってみたり、ピアノで弾いてみると、トランペットでは発見できなかったことに気づくかもしれません。
音を出さないで楽譜を見つめたり、スコアを読んだり、1小節ずつじっくり構造を研究してみるのも非常に大切です。
練習=楽器を吹くとは限らないのです。
このように練習の効率を上げるために大切なのは「行き当たりばったりにならない」ことです。
毎回の練習が充実したものになるよう、事前にすべきことを理解しておきましょう。
次回も個人練習についてのお話が続きます。ぜひご覧ください。
荻原明(おぎわらあきら)
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