前前回より ”もしも一日中音楽だけの生活ができたら”という想定でどのようなことをするか、できるかをシミュレーションしています。
前回の記事では主に「表現力」を身につけるためにどのような練習をしたらよいかお話ししました。
今回一連のお話しは、あくまでもシミュレーションですから、必ずしもこの順番、内容を行う必要はなく、「練習とはどんなことをする時間か」をお伝えすることで、ご自身が求めるものに向かってそれぞれの分量バランスを調整し、その日に行う内容の参考にしていただけたら幸いです。
ぜひ前回、前々回の記事より続けてご覧ください。
では、この続きです。
[アンサンブル]
もし複数名で練習をしているのであれば、ぜひ一緒にアンサンブルをしてください。管楽器のようにひとりでできることが限定される楽器は、誰かと一緒に演奏することでしか得られない様々な経験や学びがあります。簡単な二重奏でも良いですし、例えば一緒にロングトーンをするだけでも刺激になります。同じ部活や楽団の人であれば、合奏曲を使うのも当然意味があります。
ちなみに私はレッスンで教則本を使用する時、2小節などに区切って先に私が演奏し、次に同じ箇所を生徒さんに演奏してもらう方法をよくとります。こうした練習も意義があります。
[メンテナンス]
これは休憩がてらになると思いますが、グリスやオイルを塗るなどの簡易的なメンテナンスをするのも良いと思います。人によって違うと思いますが、練習時間以外の例えば帰宅してからなどは家のことや仕事に追われてしまい、グリスを塗るためだけに再び楽器ケースを開けることがなかなかできません。ですから、トランペットに直接関わるような内容はすべて練習時間に含めてしまうほうが都合が良い方も結構いらっしゃるのではないか、と思うのですがいかがでしょうか。
[ピアノや歌にチャレンジする]
すべての方へピアノを弾くことをオススメします。と言っても、やれショパンのワルツだのベートーヴェンのソナタを弾けるようにしましょうとは言いません。鍵盤という存在を身近なものにして欲しいのです。鍵盤楽器はハーモニーを直接的に理解できることにつながりますし、鍵盤という特性によって音階や音程の構造を理解するのにも役立ちます。曲を演奏できるのであればそうした時間にしてももちろん良いと思いますが、そうでなくても前述のように音階や和音を弾いてみたり、また、コードネームの勉強をして、簡単なポップスなどのコード進行を弾いてみるのも楽しいと思います。
コードが弾けるようになれば、簡易的な弾き語りができるかもしれません。そうでなくても、ピアノで音を確認しながら歌をうたう練習も大変に有意義です。
ピアノに慣れていない方は、本当に片手だけで構いませんから、和音をひとつひとつ押さえてみるとか、音階をゆっくり弾いてみるだけでも良いと思います。これらはトランペットフィジカル(肉体)面の休憩にもなります。
[音楽理論の勉強をする]
これもピアノと同じく難しいことを要求しているのではなく、例えば練習1回につき、1つの音階を理解してそれを五線紙に書き出し、その楽譜を見てピアノと歌とトランペットで演奏できるようにするとか、そういったことです。音楽がどのように作られているか、その中身を理解することはとても大切なことですが、多くの人が目を背けているように思います。
音階(調)が理解でき、それが演奏できるようになると、音のミスが劇的に減ります。そのように演奏に直接影響を与える要素なので、ぜひとも少しずつ積み重ねていってほしいと思います。これもトランペットのフィジカル面の休憩になりますね。
[本を読む]
音楽や芸術に関する本などを読む時間を確保するのも良いと思います。作曲家の生涯や作品の背景、音楽の歴史などを知ると、演奏に深味や説得力が生まれます。音楽に関する書籍は山ほどありますから、いろいろ読んでみてください。これもトランペットの休憩になりますね。
[音楽から離れる大休憩]
トランペットのフィジカル面の休憩はこうしたもので得られるわけですが、これでは頭が休まりませんから、一旦音楽から開放される時間を定期的に設定することも必要です。練習室から出て散歩したり、食事をしたり友人とお話ししたり仮眠を取ったり。自由に過ごす時間を用意することで、より集中した練習ができます。
というわけで、「練習時間」に何をすることができるか、挙げてみましたが、もしこれらを1回の練習時間でこなしていくとしたら、8時間くらいは必要になるのでは、と思います(それでは足りないかも)。
しかしこうやって書き出してみると、音大生だった頃の自分の生活そのままだな、と思いました。ただ私の場合、それらの「中身」がダメだったこと、効率性が低かったことが影響して全然上達しませんでしたが。
趣味でトランペットを演奏されている方は到底こんな時間を毎日確保できるきるわけはありませんが、例えばスケジュールを調整して1ヶ月、もしくは数ヶ月に一回あらかじめ丸一日練習日を用意しておく程度ならできる方もいらっしゃるはずです。
もし絶対無理!という方でも今回のブログを参考に「練習は楽器を吹くだけでなくこんなにもたくさんできることがある」と、一本調子になりすぎない毎回の工夫した練習プログラムを組んでみてください。
それでは、また来週!
荻原明(おぎわらあきら)
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