#138.トランペットの調子を戻すには

これまで3回に渡ってトランペットの演奏コンディションが悪くなった際の、その原因がどこにあるのかをフィジカル(肉体)面とメンンタル(精神)面から書き、コンディションが悪くても前向きな思考でいるためのお話しなどをしました。ぜひ過去の記事もご覧ください。

とは言え、原因追求だけでは解決しませんから、今回は解決編です。解決へのヒントになってもらえたら嬉しいです。



コンディションの方向性を転換するために


焦らない、イライラしない

合奏練習やレッスン、そして本番当日に楽器を吹いたらコンディションがよろしくないと感じてしまうと、焦りが生まれてしまいます。どうしようどうしよう、そう思うと冷静な判断を見失い、直接的な対処方法を模索してしまいます。例えば、「マウスピースの位置が定まらない!」と感じると、本当にマウスピースを当てる位置をひたすら探してしまう、残念ながらこれではきっと解決しません。このあたりは後述します。


また、焦りよりもイライラしてしまう可能性もあります。イライラすると余計に集中力が切れてしまうし、周りへの雰囲気も悪くなるかもしれません。


この場合の対処方法は、ベタですが一旦休憩しましょう。外に出て深呼吸したり、コーヒーを飲んだり、誰かとお喋りしたり。自分にとって心を和らげる方法を取ってみましょう。


落ち着いた集中力を

よく考えて、どこが納得いっていないかを理解し、その根底にある部分や考え、行為とは何かを模索しましょう。

例えば先ほどのマウスピース位置が納得いかない場合、唇とその周辺がマウスピースリムと触れる位置よりも、前歯の開き具合ものほうが原因の場合が多いのです。緊張すると力がかかり、それが顎にも影響を与えることは良くあります。歯の開きがいつもより狭ければ、マウスピースリムが当たった感じが変わるのは当然です。

他にも、セッティングルーティンが崩れている可能性も高いです。何かの動きがいつもと違っていたり、無意識にカットしてしまうとバランスが崩れて違和感を覚えることもよくあります。

そういった「追求」をすることが大切で、これは相当冷静でないとできないことです。


ウォームアップと余裕を持った時間配分を

ですから、絶対にウォームアップが必要なのです。ウォームアップとは私自身の定義ですが「コンディションの悪い部分を特定して、理論的な側面からそれを解決すること」なので、コンディションによってウォームアップにかける時間が毎回変わります。したがって、ウォームアップに時間がかかる可能性を見越して現場到着も早めにすることが大切だと考えています。


ところで、このブログ以外に私が毎日更新しているブログが別にありまして、そこに以前「ウォームアップにかける時間には個人差がある」と題した記事を書き、私の場合は現場で1時間ウォームアップ用の時間を確保している、と書きました。

ウォームアップにかける時間には個人差があるのですが、万が一のことを考えて現場に早くに到着するよう行動するのは決して損はしないはずです。少なくとも上記の「焦り」を感じることはなくなりますね。


原因を見つける

漠然と「なんか調子悪い」ではなく、原因を特定して、対処ができるのであれば解決するために実行に移りましょう。

不調の原因の多くは奏法的なものだと思います。例えば、セッティングルーティンを丁寧に実行してみると、いつもと違う動きが含まれていたり、いつもと違う力のかけ方になっているなど、気付けることが多いと思います。以下に確認しておきたいものを挙げてみます。


・吸気は負担なく正しくできているか

・呼気の際、腹筋の使う部分や体の動きは正しいか

・楽器に息を吹き込むイメージになってしまっていないか

・首の角度、楽器の構える角度はいつも通りか

・舌や顎に不要な力をかけていないか

・無理矢理鳴らそうとしていないか

・譜面台の高さや距離は問題ないか

・筋肉を瞬発力で使っていないか

・反応が悪いセッティングを棚に上げて空気圧で無理矢理音を出していないか

・音楽的イメージを持っているか


など。確認することはたくさんあります。


ほかにも、いつもは狭く響きの少ない音楽室で練習や合奏をしている人が、ホール練習の時に吹きすぎて調子を崩す、こんな理由もあります。これに関しては次回の記事でしっかりご説明します。


クールダウン

スポーツをした後は筋肉痛や怪我を防ぐためにクールダウンを行うことがあります。トランペットにもクールダウンが必要、とおっしゃる方もいますが、私個人の感覚ですとそんなに過酷なことを筋肉に強いているのかな?と疑問になってしまいます。ですので、私はクールダウンは習慣の中にないのですが、クールダウンとは一体なんなのでしょう。


私が思うに、クールダウンとは筋肉をほぐすという目的ではなくて「次回のために体のあらゆる部分の使い方を忘れないように感覚的インプットする行為』ではないか、と思うのです。

そう考えるなら、ウォームアップに時間がかかる私としてはやってみる価値があるかもしれない、と少し思っていますが、まだやっていません。


その日はもう楽器を吹かない

この選択肢が許される場面は限られているとは思いますが、どうにも調子が戻らないようであれば、楽器を吹かない日にしてしまうのも悪くないと思います。

遊びに行くとか、家でゆっくり過ごすとか、好きなことをして心も体もリラックスするわけです。

調子が悪い時は精神も集中力も相当すり減らしているので、上手にリフレッシュすることも大切だと考えます。


音楽を心から楽しむ

いろいろ書いてみましたが、最終的には音楽をすること、楽器を演奏することに喜びを感じる。音楽を前向きに捉える。音楽を心から楽しむことが、実はコンディションを安定させる最も重要なことだと思います。



といことで、複数回に渡ってコンディションが悪い時の考え方から対応策まで書いてみました。いつも安定した演奏ができるというのはなかなか難しいことかもしれませんが、常に楽しく、前向きに音楽と接してください。


それでは、また次回です!



荻原明(おぎわらあきら)

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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師