#153.トランペットはそもそも大きな音を出すために作られた道具

重いものを持つためには、それ相当の筋肉が必要です。

遠くのものを取るために、最大限腕を伸ばす必要があります。

大きな衝撃を与えるには、相当の強い動きや固いものを使う必要があります。


私たちは日常的に何かの結果を求める際、無意識にそれと比例する運動や筋力、イメージを持ちます。


実はトランペットを演奏する際、このイメージや実際の体の使う分量が比例しないことがたくさんあるのです。


トランペットは便利な道具だと考える

例えが良いかどうかわかりませんが、銃を想像してください。当然ですが私自身、本物など触ったことがありませんが、おもちゃでしたらみなさんも一度くらいは触ったことがあるでしょう。銃はその構造によって、人間が引き金に指をかけるだけで、弾が当たれば殺傷する威力を発揮する道具です。


道具は、身体能力では実現できない力を発揮できる

実際それを扱う人間はたいした力や努力を必要とせず目的を達成できる道具。道具はそんな発想から生まれています。

トランペットが生まれた経緯を調べてみると、その道具がどのような特徴を持っているかがわかります。トランペット元々戦場や城で大勢の人間に合図を送るために作られた道具でした。人間が自分の声でわめき散らしても届かないくらい大きな音を出すことを目的としていたわけです。

ですから、トランペットというのは「人間の持っている通常の力や動きを使って大きな音が出せる構造になっている」と考えてください。大きな音量、鳴る音を出そうとして体力や筋力を一生懸命使ったところで残念ながら結果は比例しないのです。


タンギングも同じ

ハッキリしたタンギングや強いタンギングをしようと思うと、舌に力を入れてしまう方が多いです。確かに、舌を固くして、思い切りぶつけたほうが強いタンギングができそうに感じるのですが、実際のところはまったく逆です。

ハッキリしたタンギングは、イコール「発音が強い」ことです。発音が強いというのは、例えば「トゥ」のTの発音をどれだけバチンと破裂させられるかが問われます。破裂音を発するには、舌ができるだけぴったりと上前歯裏に貼り付くことが大切で、そのためには舌はできるだけ柔らかくなければなりません。


このように実際に起きる結果と、人間が用意することは比例するとは限らず、この場合は舌と歯の関係ではありますが、道具を思ったように使いこなすには直感的ではない方法をとる必要が出てくることが多い、と思っておくと良いでしょう。


体を大きく使ってしまうと、結果的にショボくなってしまう、そんなことが起こる可能性が高いので、イメージと体の使い方をイコールにしないという発想で、より良い演奏ができるよう研究してみてください。



荻原明(おぎわらあきら)

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ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師