前回、前々回と楽譜の書き込みについて書いております。今回が最終回。
これまでの2つの記事とつなげて読んでいただければ幸いです。
楽譜には極力書き込むべきではない、というのが持論ですが、書き込んだほうが演奏効率が上がるものもあります。今回は「書き込むべきもの」の紹介と方法、理由を解説します。
鉛筆で書くこと
その前に、必ず守って欲しいことがあります。それは書き込みは原則として「濃い鉛筆を使用する」ということ。
中高生は日常的にシャープペンを使っていると思いますが、シャープペンだと演奏中に遠くから見る譜面の場合は授業中のノートと違って薄く、細いために読みにくいのです。また、ステージという日常とはだいぶ状況の違う場所ではライトが明るいために文字が反射することもあります。演奏中に楽譜を読むために姿勢を変えてしまうのは、演奏に支障をきたす、という話をこのブログでも以前話したことがありますが、そうしたことは無いほうが良いのです。また、シャープペンは紙を窪ませてしまうので消しても跡が残り、チラチラと反射して目にはいる、ということも使わないほうが良い理由のひとつです。
これらは濃い鉛筆を使用することで解決します。可能であれば「H」ではなく「B」のタイプが良いです。
なお、授業ノートではないのでカラーペンや蛍光ペンは原則使いません。
ちなみに私は太さが一定に保てるノック式の鉛筆を使っています。これなら削る心配も折れて使えなくなる心配もありませんのでオススメです。
同じノック式で赤の色鉛筆も持っています。カラー鉛筆については後述します。
なぜ書き込みをするのか
これを明らかにしておく必要があります。なぜ書き込みをするのか。それは自分のためではなく、相手へのためです。例えばこれからいくつか書き込むべきものについて解説をしますが、楽譜にミスがあってそれを放置していたら、合奏中に間違った音を出してしまうかもしれません。繰り返し記号を見落として、ひとりだけ先に行ってしまうかもしれません。
するとどうなりますか?合奏が止まってしまいますね。もしあなたが事前の譜読みでミスに気付いてそれを直しておいたら、繰り返し記号を見落としそうだな、と思い対策をとっておいたら、合奏中に一旦ストップ、確認、再開、という段取りは一切起きず、その分もっと音楽的な内容を作り上げることができたかもしれません。
書き込みというのはこのように、相手に迷惑をかけないようにすることがまず前提にあると思うと、何を書く必要があるのかが見えてくると思います。
書き込みは消すことが前提
音楽はどんどんアップデートされていくもので、学校の部活動や一般団体であれば、ひとつの作品を長期的に作り上げていくことが多くなるため、指揮者や指導者であっても考えや捉え方が変わっていく可能性があります。みなさんも練習を重ねていくうちに、以前よりもっと良い表現方法を思いついたり、無意識に良い方に変化していくこと、ありますよね。そうした中に、ずっと残っている過去の書き込みが発想の自由を妨げたり、イメージの邪魔になることも多いのです。
また、(忘れている方が多いかもしれませんが)図書館の本と同じく楽譜は共有財産であり、使ったら返すのが本来あるべき姿です。次に使う人は自分ではない可能性が高いし、同じ指揮者が同じことを言うかどうかもわかりません。そのままにしておくと次回、誤解を招く恐れがあるので、戻す際には消しゴムでまっさらにしておくことが本当は必要なのです。
アイコン、記号で書く
前回の記事で「(読むために)時間を必要とする書き込みはNG」と書きました。ご覧になっていない方はぜひ読んでみてください。
演奏中は当然演奏することに集中します。そんな中に、楽譜に書いてある文字をじっくり読み、考え、実践することはできませんし、集中力を阻害してしまうことは避けるべきです。ではどうするのか。アイコン化です。
道を歩いているとたくさんの道路標識がありますね。運転手は走行中、様々なところに意識を向ける必要がありますので、一瞬視界に入れば理解できるアイコンが大変有効なわけです。
楽譜も道路標識と同じようにある程度決まったことであればアイコン化することをおすすめします。
ここでは、使っている人が多いと思われる書き方を紹介したいと思います。ただし、同じ記号であっても人によって使い方が違う可能性もあります。書き込みは誰かに見てもらうものではありませんから、自分が理解していれば問題ないのでそういったことが起こります。
[メガネ]
「注目!」「指揮者を見る」という意味。この場面で何かが起こるから指揮者を見ようとか、周りへ意識を向けようとか、注意喚起のために使用します。
[波線]
テンポが減速する際に使われます。楽譜にrit.と書いてあっても文字が小さくて見逃しそうだな、と思った時や、楽譜に書いていないけれど指揮者がテンポを遅くする指示を出したり、少し溜めるような表現を求められた場合に書き込みます。
[矢印(右向き)]
波線と対照的な意味として用いられ、テンポの加速を求められた際に書き込みます。また、一般的かわかりませんが、私は「場面が変わるけどそのまま突入する」場合に右向きの矢印を書き込みます。
[矢印(左向き)]
左向きの矢印は、テンポが走ってしまわないように注意喚起する記号として使います。よって、右向きの矢印と対照的な存在ではありません。
[スラッシュ、ダブルスラッシュ、(カンマ)]
場面が変化する際の「区切り」を表すために使います。一呼吸置いたり、瞬間的に間を開けたりする場合に書き込むことがあります。五線を貫かないように書くことがポイントです。
楽譜のルール上、カンマが書いてあっても同じ意味で捉える場合があります。
[ブレス(カンマ)]
これはよく使われる記号ですね。ブレスは計画性が大切なので、なくなったら吸う無計画な演奏ではフレージングや演奏表現が不安定になるので、敢えて書き込む場面があっても問題ないと思います。
また、ブレスマークだけでなく、カンマ記号も呼吸に関しての意味として使う場合がありますが、経験則では、カンマの場合は、単なるブレスというよりもフレーズとの関係性が強いイメージがあります。したがって、カンマが最初から楽譜に書かれている場合は、そこで音楽に一瞬間が生まれる可能性もあり(上記のスラッシュと同じ使い方)、自身で書き込む際にもどういった意味なのかをきちんと理解しておくことが大切です。
以上、よく使われる書き込み方を紹介しました。先ほども申しましたように、必ずそういう意味である、ということはないので、結局のところ奏者本人がわかればそれで良く、オリジナルのアイコンを作っても問題ありません。
こんな場合はどう書きますか?
指揮者からの要求は、自分の中で消化しなければなりません。「そこは重要なところだぞ!」と言われて、その意味を理解しないまま、鉛筆で音符の周りをグルグルしても、演奏に反映させることはできず、ただ楽譜を読みにくくしているだけです。
指揮者が何を伝えたくて「重要」と言ったのか。それを理解した上で書き込むべきことを適切な方法で書き込むようにすべきなのです。
では、指揮者や指導者から楽譜に書かれていない要求や指摘を受けた場合、それをどのように解釈し、書き込むと良いか、その一例を解説します。
[ケース1:聴こえない/うるさい]
「トランペット、そこ聴こえない!もっと吹いて!」「トランペット、そこうるさい!」というアンサンブルのバランスに関連する指摘は多いと思います。これを言われたら皆さんは楽譜にどのように書きますか?
ここまでのお話を読んでいただけたのなら、まさか「聴こえるようにもっと吹く!」「うるさくならない!」なんて書きませんよね。
最も単刀直入な書き方は当然、
このようなダイナミクス記号ですね。ただし、アンサンブルでのバランスというのは単純に音量だけのことを言っているとは限りません。主張する意思を感じられなければ「聴こえない!(お客さんに聴いてもらおうとする意思を感じない)」という意味かもしれません。ですので、強弱記号だけでなく「sonore(ソノーレ=よく響かせて)」とか、「amabile(アマービレ=優しく)」など書けたら素晴らしいですね。
[ケース2:もっと元気よく]
「トランペット、そこはもっと元気よく演奏して!」と言われたらどうしますか?日本語で「もっと元気よく!」はダメですよ。
演奏表現に関する要求は、最適な楽語を書き込むことが最もわかりやすいので、例えば「spiritoso(スピリトーソ=元気に)」とか、少し意訳になりますが「marcato(マルカート=音をひとつひとつはっきりと)」なども場面によっては適するかもしれません。ちなみに楽語が長い時には略記でmarc.とも書けます。
あとは、場面にもよりますが、アクセント記号なども有効かもしれません。
[ケース3:アゴーギクをつけて]
「なんか棒吹きだなあ」「感情がこもってないんだよ」「指揮をよく見て!」「アゴーギクをつけて!」「歌を感じて!」などと言われたらどうしますか?当然日本語で「ぼうぶきにならないで!」「アゴーギクをつけて!」なんて書いてはいけません。「私、言われている意味がわかっていません!」と言っているようなものです。
これらに共通する指摘は要するに「機械的な演奏になっている」ということで、音符を並べてしまっていたり、フレーズにテンポの緩急がなく、まるでメトロノームのカチカチに当てはめているような演奏時に言われる言葉です。したがってここでは、
「cantabile(カンタービレ=歌うように)」とか「espressivo(エスプレッシーヴォ=表情豊かに)」などが良いと思います。ちなみにカンタービレはcant.、エスプレッシーヴォはespress.とかespr.と略記できます。
それプラス、先ほど紹介した、波線とか矢印を組み合わせるのも良いかと思います。
[ケース4:トランペットが主役だよ]
「その場面はトランペットのために書いてあるんだよ」とか「トランペットが先頭に立って演奏して!」と言われたらどうしますか?まさか日本語で「トランペットのためにある!」「先頭に立つ!」「気合い!」とか…もういいですよね。
この場面は多くのお客さんがトランペットに注目する「見せ場」である。そうした自覚を持って演奏して欲しいわけですから、例えばトランペットパート全員で演奏している場合には「soli」、ひとりの時には「solo」と書くのが良いでしょう。soli(ソリ)はsoloの複数形です。
このように、指摘されたことを自覚して演奏できるのならば、その書き方は自由なのですが、おわかりいただけたように楽譜には「楽語」があるので、これを積極的に使ってください。ということは、楽語を覚えて、書けるようにならなければいけません大変!めんどくさい!」と思いますか?でも、楽譜に書かれている音符や拍子はみなさん理解しようと努力しますよね。覚えないと演奏できないから。じゃあ楽譜に書いてある文字は無関心でいいのでしょうか。Allegroという文字の意味がわからないから、それは無視してしまおう、そんなことをしたら演奏するテンポがまったくわかりませんよね。楽譜に書かれている文字情報はすべて演奏に必要なものだから作曲家が書き記しているわけです。だったら、その作品を演奏する私たちと、その作品を組み立てている現場監督である指揮者の考えだって同じくらい重要なものです。
それを記録するためにはやはり楽譜のルールに則って書き込む必要があると考えてほしいのです。
みなさんが学校で勉強している(していた)英単語に比べたら楽譜に登場するものなどほんの少しなのですぐ覚えられます。しかも用いられる楽語はイタリア語が主流で、イタリア語は読みも書きもローマ字にとても近いので英語よりもずっと簡単です。
覚え方ですが、楽語辞典というのがあります。これを一冊持っておきましょう。そしてわからない楽語が出てきたらすかさず調べる。そして頭にインプットする、これが基本です(日本語訳を楽譜に書き込んではいけません!)。まとめて覚えてしまうには、辞書を片っ端から丸暗記するのも良いですが、辞典に載っている楽語の中でも使用頻度が高いものは本当に限られたものだけですから、それよりも音大入試の問題集を手に入れて、楽語の問題を集中的に勉強するほうが効率的です。入試に出てくる楽語のほとんどは実用性の高いものばかりです。
演奏をサポートする書き込み例
先ほど紹介した書き込みは、楽譜に書いていない追加要素でした。
次に紹介するのは、演奏をする上でミスをしないようにするための演奏サポートとしての書き込み例です。どのようなケースがあるでしょうか。
[楽譜上のミス]
売り物の楽譜は、印刷して製本してあるだけで完璧な印象を持ちがちですが、人間が作っている以上、ミスはあります。しかも、場合によっては結構あります。特に古い楽譜とか、外国の出版譜は想像の斜め上の浄書ミスをしていることがあります。
また、finaleなどの楽譜浄書ソフトで作ると、誰が作ってもある程度「それっぽい」完成度のように見えますが、ミスはきっとどこかにあります。ミスではなくても、レイアウトがあまりお上手ではないと、読みづらくてミスをする場合もあるので、何とかしたいところです。
直し方はそのミスの状態によっても変わりますので臨機応変に対応したいですね。
[拍がわかりにくい場合]
複雑で音価の細かな音符がたくさんあったり、極端にテンポが速い、もしくは遅いと拍子がわかりにくく感じる場合があります。その際は「拍のアタマにしるし」を付けます。
拍がわかりにくい時に書き込みをする方は多いと思いますが、五線を貫く線を引いてしまうと、小節線の位置がわかりにくくなって違うミスを誘発する可能性があり、おすすめしませんし、線を斜めに引いてしまうのも位置がわかりにくくなるので良くありません。
この書き込みは、たくさん書きすぎるとかえってわかりにくくなるので、どうしても読み間違えそうなところに限定したほうが良いと思います。
[拍子がわかりにくい場合]
例えば7拍子の小節で「2+3+2」なのか「1+4」なのかで、その音楽の捉え方が変わります。
また、極端にテンポが速いもしくは遅い場合や、molto rit.など大幅にテンポが変化する場面では、指揮者の棒の振り方を把握しておく必要があります。以下に3つの書き方例を挙げてみます。
「in 8」というのは「8つ振り」という意味です。楽譜上は4拍子ですが、倍のカウントを指揮者がする場合にこのように書きます。ですから、逆にとてもテンポを速く捉える場面があった場合には、4拍子ですが「in 2」になる可能性があるわけです。
rit.が強くかかり、4拍目を倍で振る場合に書く例です。これが書いていないと、間違えて次の小節に飛び込んでしまう可能性がありますね。
この小節は「3+2+2」の7拍子なのですが、リズムの都合上それが若干わかりにくいです。そこで最初の8分音符3つが1つのグループであると視覚的にわかるように三角形を書きました。その後にある縦線は、先ほど「拍がわかりにくい場合」の時に使った書き込みと同じものです。
[長休符のガイド]
吹奏楽譜ではあまり見ることはありませんが、管弦楽曲だと長休符(パート譜で2小節以上休みの時に用いられる休符)が果てしなく長いこともよくあります。
数百小節の休みともなると、もはや今がどこなのかもさっぱりわからなくなる可能性がありますから、長休符の中で、予めどこかポイントとなる部分を見つけて、分割しておきます。
その部分に特徴的なことがあれば、それも書き込んでおくとよりわかりやすくなります。
Cym.とはシンバルのことです。この部分にだけおもいきりシンバルが1発鳴る作品だとしたら、とてもわかりやすいガイドになりますね。
しかし、ガイドを書きすぎるとかえってわかりにくくなりますから、注意しましょう。
[繰り返し記号]
繰り返し記号は見落とすことは少ないですが、何度も出てくると戻る場所が迷子になる時があります。そのような場合は、繰り返し記号に「羽」をつけてみましょう。視覚的に囲まれている感じになるので発見しやすくなります。
[臨時記号]
臨時記号が多発して複雑になったり、細かい音符が多いために1小節が長くて小節後半の臨時記号が有効な音を見落としそうな心配がある場合などに音符の上に小さくフラットやシャープ、ナチュラルを書いておくことも有効です。
ただ、これもあまりたくさん書いてしまうとわかりにくくなりますので、ほどほどに。
[急いでページをめくる]
急いでページをめくらなければならない場合の書き方には決まりがあります。ページの右下に「V.S.」とわかりやすく書き込みます。
これは「Volti Subito(ヴォルティ・スービト)」と読み、意味はそのまま「急いでページをめくりなさい」です。親切な浄書屋さんだと最初から印刷に書き込まれている場合もあります。でも本当はこの記号を書かなくても落ち着いてめくれる浄書をすべきなんですけどね。そうもいかない時があるんですよね。
[ミュートのon/off]
ミュートのつけ外しが頻繁に出てくる場合や、ミュートを装着するタイミングが限られている際、書き込みをしておくとミスを回避しやすくなります。
吹奏楽では小編成の編曲作品や、ポップス、ジャズなどはミュートを多用する作品が多い印象がありますし、トランペットアンサンブルでもミュートのつけ外しが激しい作品があります。ストレートミュートからカップミュートに交換、なんて指示も過去にありました。
楽譜に書き込む際、例えばミュートをつける指示は赤、外す指示は青と言ったように色で識別できるようにする方法もあります。例外的に色を使う方法です。
ただし、その際にもカラーペンや蛍光ペンではなく、色鉛筆を推奨します。
ミュートのつけ外し指示が書かれている場所について、みなさんも経験があると思いますが浄書のルール上、ほとんどの場合ミュートで演奏し始める場所に「mute」と書くため、実際問題ミュートを装着するタイミングはそこでは間に合いませんから、独自に準備を開始する場所を見つけて、赤鉛筆で「Mute」なりを書き込むことをおすすめします。
[セーニョ記号、コーダ記号]
主にポップス作品に多いダルセーニョ記号。「D.S.」と書かれた場所にたどり着き、「え?どこに戻るの?!え?え?」となってしまうことが多いです。
また、ダルセーニョでセットになることも多いコーダ記号。これも見失ってしまうことがよくあります。
演奏中に焦らないためにも、予め何かわかるように書き込みしたいところです。
方法はいくつかあります。
まず、ミュートと同じように色で書いておくことで発見しやすくなります。
そして、飛ぶ先がどのなのか、練習番号など指標になるものを書き込むことで、およその位置を想像することができます。この場合「練習番号Cに戻る」わけですから、冒頭に近い部分であることが想像できます。これだけでもだいぶ焦らなくて済みます。
視線の向かう先に矢印を向けておくと、見つけやすくなります。目的地まで全部引いてしまうと、その後にコーダが出てくるとクロスや並行線が生まれてかえってわからなくなりますし、音符を潰してしまうのでお勧めしません。
このように工夫して、自己流で良いので合奏でわからなくならないように対策をとっておきましょう。
書き込んだことで安心しがち
みなさんは日常生活で約束事などを忘れないためにどのような対策をとりますか?私がよくやってしまうミスに、メモやリマンダーに入力して安心してしまう、なんてことがあります。
楽譜の書き込みも同じで、なんでもかんでも書き込むとそれだけで安心してしまい、体や頭で理解しようとする緊張感がなくなってしまいます。
重要な書き込みはもちろんすべきですが、書き込んだら同時にそれを頭や心、イメージ、体にインプットするように心がけてください。
例えば「cant.」と書いて、合奏中にその場面に差し掛かったら「よし、ここは歌うところだ、歌うぞ!」ではきっとカンタービレな演奏にはなりません。そうではなく、作品のその場面はこのように歌うと美しい!このように歌いたい!と予め個人練習などで研究を繰り返し、作品全体を自分のものにしてしまえば、楽譜に書き込んだ文字を読まずとも、自然と歌心たっぷりに演奏するはずなのです。
書き込みに頼りすぎないことが実は最も大切なことなのです。
指番号の書き込みについて
前回の記事では、「指番号や音名を書き込まない」と書きましたが、まだ初心者なのにいきなり合奏や基礎練習に参加することもあると思いますし、「他の人に迷惑をかけないために書き込みをする」、「個人練習のうちに解決しておきたいことは書き込んでおくべき」という観点から考えるならば、指番号や音名は、必要な箇所に限って薄く書き込むのはしかたがない場面もあるかな、と思います。
これはあくまでも最初の段階だけです。覚えたら消しましょう(そのためにも薄く書くのです)。そうしないと指番号を見て音を出すクセが付いてしまい、音符や楽譜全体を見られないだけでなく、合奏中の他のパートの音が耳に入らなくなってしまいます。
トランペットの運指やその順番(法則性)は大変シンプルです。理屈さえわかれば、近い将来運指表がなくても出すべき音と運指を一致させることができるのです。
どうしても書き込みをしたい場合は
「いや、でも、どうしてもいろいろ書き込んでおきたい」という方もいらっしゃるかもしれません。特に合奏やレッスンというのは、指導者から受け取る情報量が大変多いので、一生懸命覚えようとしても取りこぼしてしまうことも多々あります。
その場合は、パート譜をもう1部用意しておきましょう。これは演奏に使う楽譜ではなく、メモ用です。これにどんどん書き込んでいきます。合奏が終わったらそれを読み返し、指揮者や指導者から何を言われたのか、どんな演奏を求められたのか、何を課題としているのか、自分は次の合奏までに何をどのように練習、研究すべきか、思いを巡らせてください。その中から導き出した言葉や記号を、合奏で実際に使用する楽譜に今回の記事を参考に書き込むわけです。
ただし、合奏中にどれくらい書き込みができるのかはわかりませんし、書き込みながらもリアルタイムで指揮者からの要求には応えなければならないので、ちょっと難しいところがあるかもしれません。ですので、本当だったら録音しておくほうが効率良いかもしれませんね。自分や周りの音も聞けますから。
ちなみに個人的な研究を目的とした楽譜のコピーは違法ではありませんので、問題ありません。
ということで3回に渡って楽譜の書き込みに関して書いてみました。
ぜひ良い習慣から良い結果へ導くプロセスを手に入れてください!
それではまた次回!
荻原明(おぎわらあきら)
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