日常生活では「行動」と「実感」がリンクしていることがほとんどです。
例えば、イスを手前に引けば動きます。蛇口をひねると水が出ます。握ったボールは腕を振ると飛んでいくし、機械のボタンを押すと「ピー」とか鳴ったりランプが点灯します。スマホは触れれば何かが起きます。
このように自分が起こした行動→反応→実感の流れが当然あると人間は思っているし、ほとんどの場合それは間違っていません。
しかし、この流れが通用しないものがあります。それがトランペットの演奏です。
空気圧は実感がなくてちょうど良い
例えばハイノートが苦手という方の演奏を拝見すると、とても一生懸命音を出そうと頑張っています。しかし、その結果、シューーー!と空気の音だけになってしまう。このようなことがとても多いです。
ハイノートに限らず、音階などを演奏していて途中の音1つだけがなぜか空気の音だけになってしまう経験をされた方はとても多いはずです。「ドー プシュー ミーファーソー」とか、
この音が突然鳴らなくなった理由は、もちろんいくつかの可能性はありますが、最も考えられることは「その音を出すために用意した空気圧が高すぎる」ことです。
私は、この音が鳴らない現象を、「トランペットが『その条件に該当する音がありません』とエラーを教えてくれている状態」とレッスンでよく話します。
どんなにセッティングがバッチリでも、それに適した空気圧バランスがなれば唇は振動しません。
その空気圧、厄介なのがトランペットを演奏する際に必要なレベルはどんな音でもほとんどの場合「実感がない」レベルなのです。したがって、高い音だから、強い音だからと強い空気圧を実感できるレベルまで高めてしまうと、圧倒的なバランス崩れを起こして結果が伴わないのです。
リンクの仕方
そこで私はこのようにお話します。
・フル稼働している頭や心の中に描く音楽、ソルフェージュ力は、トランペットから生まれた結果(聴覚)と強くリンクさせる。
・しかしその描いている音楽やソルフェージュ力を、筋力や動きといったフィジカル(身体的)アクションとリンクさせてしまうと、ほとんどの場合イメージ通りにはならない。
例えば、自転車を運転していて倒れないのは、意識的に体をコントロールしているのではなく、まっすぐ走行するイメージが転ぶことなく体をバランス良くさせているからです。
これと同じで、素晴らしい音や音楽、音楽的表現力への強いこだわりを頭や心に持っていると、体は自然とそれをもとめて反応、変化をしていきます。しかしそれらは実感できるレベルではないことがほとんどですから、体の動きを求めて音楽をしようとするのはかえってバランスを悪くさせてしまうのです。
これは空気圧だけではなく、例えば音の高低を体の動きとリンク…具体的には高い音(低い音)へ向かうときに体を上に(下に)自らの意思で動かすと、演奏は不安定になります。
「高い音」と言いますが物理的に高い位置に高い音があるわけではなく、あくまでも楽譜上のルールでしかありませんから、体を上に持っていくことに何の意味もないどころか、より不安定な結果をもたらしてしまうのです。
頭や心は耳とリンクさせるに留め、体に不要な力をかけずにいられることで安定した演奏につながっていくと思います。ぜひこの関係を練習の時に思い出してみてください。
それではまた来週!
荻原明(おぎわらあきら)
[明日締切!]トランペットオンライン講習会、次回は10月4日(日)「上達の三要素『練習、研究、実験』」です。ぜひご参加ください!
トランペットから音を出さない聴講型のオンライン講習会なので、ご自宅からでもご参加可能です。次回は「上達の三要素『練習、研究、実験』」がテーマです。
本番以外で楽器を吹く事を「練習」とひとくくりで言う場合が多いのですが、的確に結果を導くためには練習を細分化して考えるべきです。効率的な時間にするための考え方とそれぞれの実践方法を解説します。
トランペットを1人で吹く時間があまり確保できない方、指導者の方にお勧めの回です。
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