#120.音楽のお仕事 その5(フリーランスという音楽家)

音楽の道へ進みたいと考えている方に向けたお話をしております。今回はその5回目。

これまでのお話もぜひ読んでください!

さて前回の記事(その4)では、音楽関連のお仕事に就くためには、楽器の練習だけでなく、他にもたくさんの準備をしておくことをお勧めします、という内容でした。


というのも、音楽大学を卒業直後にオーケストラの空きが出て、オーディションを受けたら何十・何百の倍率から選ばれました!というサクセスストーリーは現実的ではありません。別に夢を壊すつもりはありませんよ。努力して目指してほしいのですが、可能性が極めて低いので、みんながみんなそうなれるわけではない、という話です。


将来的に楽団員になれるかもしれませんが、それまでの期間はやはりフリーランス(= 自分が商品という自営業者)として活動をせざるを得ません。そうなると、結局楽器の演奏に長けているだけでは難しいところが結構あるから、いろんなことができる人になるべき、というのが前回の記事でのお話。しかも、今回のコロナのように自分の実力などまったく関係ないところで仕事が減ってしまう、という事態も起きてしまうのですから、やはり自分の可能性の幅は広くしておくほうが良いのです。


しかしそうなると、することがとても増えます。

まず、楽器の練習は何があっても怠ってはいけませんから、毎日必ず練習時間を確保します(少なくともその心構えを生活の中心に置くことは絶対)。


その上で、あと何をするかです。


例えば自分の演奏をたくさんの人にPRしましょう。生のコンサートを企画しますか?それも大切ですね。しかし自主公演というのは準備することがたくさんあって本当に本当に大変です。そのわりには会場の集客人数が限られていますから、実は生のコンサートは「たくさんの人に」という目的は達成されにくいのです。それであればコンサートを企画する前に動画を撮影してYouTubeなどで公開したほうが、不特定多数の人が時間や期間を気にせずに見てくれるので目的に合っています。


YouTubeを拠点にするのも良いですが、自分を徹底的にアピールするためにはホームページがあったほうが利便性が高いです。そこにすべての活動データを置いて発信すると、情報がバラけなくなります。


また、鮮度の高い情報を配信し続けるためにはSNSの存在も欠かせません。お友達との交流に使うというよりも、PRとして使うわけです。可能性を広げる意味で複数のプラットフォームを持っていたほうが有利です。自分という存在を知ってもらうために演奏だけでなく、ライブ配信などをしてみると固定ファンが増えるかもしれません。


さて、これだけでも、動画の撮影、動画の編集、ホームページ作成、SNSでの配信作業を継続的に行うための時間が必要になります(こうしたインターネット上の存在は更新し続けないと鮮度がすぐに落ちてしまい、かえって人が離れてしまうのです)。そう考えると結構時間が必要になるかもしれません。


いかがですか?ああ大変だ、ああ面倒くさい!と感じますか?

それともワクワクしますか?


フリーランスで音楽を続けるために様々な活動をしてますが、常に時間が足りないことに悩まされています。フリーランス(自営業)なので、活動しないとか、仕事のオファーが来ても断ってしまえばいくらでも休めます。しかし休めば収入が発生しません。じゃあ常に動き続けていれば相当儲かるかと言えばそれも全然違います(そういう人も中にはいらっしゃると思いますが、基本的にはただ動き続けているだけでは稼げません)。例えば自分としては「とても良い企画」だと思って具体的に形にして宣伝したけれど誰にも見向きをされない、なんてこと日常茶飯事です。それにもめげずに次の企画を練って公開しての繰り返し。


ですから、フリーランスで成功するためのノウハウは僕が教えてほしいくらいですが、ひとつ絶対に言えることは、「一日中音楽という仕事のことばかりをやっているのが楽しい」と思えなければこの状況はかなり辛いです。趣味ではなく仕事です。自分の活動が生活するための収入にならなければいけません。ですから正直、楽器の練習と演奏だけしていたいと言う人はフリーランス向いていないと思います(それだけで十分生活できる稼ぎがあるのなら話は別)。もちろん、音楽の道を志すきっかけとしてはこの気持ち、とても大切です。


ということで、次回は「お仕事とお金のお話」をしてみたいと思います。


さて、今回は特にフリーランスとして音楽のお仕事をする上での、精神的な面のお話が多くなりました。

「音楽が好き」という気持ちも、そのフタを開けてみると人それぞれ、立場によっても異なると思います。その中で音楽を仕事とする場合の心の持ち方は少々独特なものであるように感じます。将来ご自身が音楽を職業にしたいと思った際、様々な(意図しない)状況に自分が置かれたと想定して、それでも音楽が好きだと思えるか、ちょっとだけシミュレーションしてみましょう。ネガティブに考えてほしくはありませんが、自分の音楽への情熱を客観的に見る、そんな瞬間があっても良いのでは、と思います。


それではまた来週!



荻原明(おぎわらあきら)

トランペットオンライン講習会9月11日(土)開催「アーバン/華麗なる幻想曲」を演奏しよう

「アーバン金管教則本」の著者、ジャン=バティスト・アルバンの残した「12の幻想曲とアリア」から「華麗なる幻想曲」を課題曲としてオンライン公開レッスンを聴講していただく全2回のシリーズです。音楽大学の入試課題曲にもなっている作品と聞くと気後れしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、「歌う表現」「フレーズの捉え方」「強弱の解釈」「タンギングの基本」「ダブル、トリプルタンギングの実用性」など、学べることがたくさん含まれています。 2回に分けてイントロダクションから第3ヴァリエーションまでのすべてを演奏していただきます。

今回は現役音大生が生徒さん役を務めてくださいます!


こちらの動画は第8回のオンラインレッスン形式による講習会の様子です。

詳細は荻原明オフィシャルサイト内にございます特設ページをご覧ください。

1回分お安くなっているフリーパスをお求めいただければこれまでのアーカイブもすべて視聴することができるのでおすすめです!ぜひご参加ください!

この回のみの単発購入はPeatixにて承ります

皆様にオンライン上でお会いできることを楽しみにしております。ぜひご参加ください!

ラッパの吹き方:Re

隔週土曜日の朝更新トランペットと音楽についてのブログ「ラッパの吹き方:Re」 タイトルの「Re」は「Reconstruction(再構築)」とか「Rewrite(書き直し)」の意。 なので「ラッパの吹き方 ”リ”」と読んでください。 荻原明(おぎわらあきら):トランペット奏者、東京音楽大学講師、プレスト音楽教室講師